しかし、2007年6月に東京都渋谷区の「松濤温泉シエスパ」で発生したガス爆発死亡事故を契機とした温泉法改正や都の条例強化、さらには08年のリーマン・ショック後の不況のあおりで普及は鈍化。近年の燃料費高騰も火に油を注ぐ形となり、全国チェーン「やまとの湯」が閉店するなど、事業環境は厳しさを増している。極楽湯では、水道料金や光熱費が売り上げの2割に相当するという。
“土俵際”まで追い詰められた銭湯業界だが、昨年秋からの原油安は、お湯を沸かすガス価格の低減につながり、「昨年10月と比べ、ガス単価が関東、東北で3割低下した」(極楽湯)など、ホッと一息ついている。ただ、同社の松本専務は「原油やガスの価格の変動に一喜一憂しても仕方ない。お金の問題以前に、お風呂の最大の魅力は清潔感だ。これをおろそかにする業者は生き残れない」と言い切る。
清潔な温浴施設は海外からもニーズが高い。極楽湯は13年2月に上海1号店を皮切りに業界で初めて海外進出。今年2月には2号店をオープンした。今後10年で、100店舗まで増やす考えだ。