■“体を張って”原因物質の特定に挑む
≪TEAM≫
「ルシード デオドラントシリーズ」は、技術開発センターに属する基礎研究3人、製品開発10人のメンバーが全員、“体を張る”ことで生まれた。
開発チームがミドル脂臭の分析に使った「ガスクロマトグラフ質量分析装置」は、原因物質を特定する上では大いに役立った。しかし、臭いの発生部位や不快の度合いを詳細に調べ上げるには、機械だけでは限界がある。そこで開発チームのメンバー全員がミドル男性の臭いを直接、嗅ぐことにした。
臭いがきつい人もサンプルに含める必要があったため、社員を被験者にすれば社内がぎくしゃくしかねない。このため被験者は募集会社を通じて集め、名前や住んでいる場所を伏せた上で嗅がせてもらった。
臭いの感じ方は人によってばらつきやすく、メンバーの嗅ぎ分ける能力を高いレベルで一致させる必要があった。そこで同社は、工場などの悪臭を測定する臭気判定士の試験にならい、5種類の紙のうち臭いのついた2種類を当てたり、強度に応じて6段階に嗅ぎ分ける訓練を実施した。中には基盤技術開発室の志水さんをはじめ、実際に臭気判定士の資格を持つ人も4人いる。
それでも被験者が多いこともあり、データの収集やメカニズム解明は困難を極めた。清水真由美・スキンケア製品開発室グループリーダーは「前に整髪剤の開発を担当し、香料を扱っていたのである程度は分かっていたつもりだったが、臭いの世界は複雑だと改めて思った」と振り返る。
ミドル脂臭の不快さには「決して平気なわけではなかった」が、プロ意識が優先したのか「意外と冷静に対処できた」という。ただ、中には苦痛に感じるメンバーもいたようだ。