日の丸油田、権益争いメジャーと激突 撤退余儀なくされたアザデガン獲得に再挑戦

 

 経済制裁で撤退を余儀なくされたアザデガン油田などイランの油ガス田開発に日本企業が再挑戦する。自主開発の“日の丸油田”をイランで広げられればエネルギーの安定供給に大きな効果があるが、欧米の資源メジャーとの激しい競争になりそうだ。また、次期米大統領に就任するドナルド・トランプ氏は制裁解除に道を開いた核合意の見直しを掲げており、再び開発が困難になる不安も残る。

天然ガス埋蔵量1位

 「イランは原油埋蔵量で世界4位、天然ガスで世界1位の資源大国。魅力的な市場だ」。大手商社幹部は権益確保に意欲を示す。

 イランは制裁で失った油ガスの市場シェアを取り戻すため、老朽化した生産設備の更新・増強を急ぎ、海外の資金や技術を誘致しようと熱心に働きかけている。

 なかでも注目が集まるのはアザデガン油田の国際競争入札。イラン政府は日本の技術力に対する期待が強く、かつて権益を持っていた国際石油開発帝石(INPEX)は当時の知見を再活用できる強みもある。

 ただ、世界市場で圧倒的な影響力を持つメジャーとの競合は容易ではない。日系各社は他の油ガス田の権益確保も視野に入れ、まずは同じ土俵に上がった段階だ。アザデガン油田獲得に向け“日本連合”を組む案も浮上している。

 日本政府も昨年、イランと投資協定を結び、総額100億ドル(約1兆1800億円)の投資資金を用意するなど企業の進出を側面支援している。

大半は今も手つかず

 アザデガン油田の開発をめぐりINPEXがイラン側と合意したのは2004年。資源を海外に頼る日本にとって重要な権益だったが、核兵器開発疑惑で制裁圧力を強める米国への配慮で10年に撤退を迫られた。

 その後、日本が引いた間隙を突き中国石油天然ガス集団(CNPC)が参入したものの、イラン石油省は「開発の遅れ」を理由に、14年に契約解除を発表した。中東最大級のアザデガン油田は今でも大半が未開発とみられ、核合意を契機にした今回の再交渉は雪辱を果たす絶好の機会となる。

 一方、油ガス田開発への参入は、イランの核開発制限と引き換えに国際社会が制裁を解除することが前提だ。しかし、トランプ氏は米大統領選で合意破棄を公約しており、制裁解除が想定通りに進むか懸念が強まっている。

 対イラン投資の加速を決断する前に、「トランプ外交の方向性を見極める必要がある」(貿易筋)と慎重な見方も出ている。