退任の加藤社長、新料金プランでの業績悪化が「まだ私の心の傷」

株主総会詳報・NTTドコモ
NTTドコモの株主総会で議長を務めた加藤薫社長=16日、東京都港区(報道向けのモニター画像より)

 NTTドコモは16日、都内のホテルで株主総会を開いた。議長を務めたのは、総会後の取締役会で退任する加藤薫社長。平成24年からの社長時代、米アップルのiPhone(アイフォーン)を扱っていなかったドコモは、KDDIやソフトバンクとの顧客争奪戦で劣勢に回ったが、iPhoneの取り扱いを決断し、25年秋に販売に踏み切ったのを機に業績は回復してきた。加藤社長は「この状況でバトンタッチできることに安堵している」と、株主に最後のあいさつを述べた。

■新しい答弁スタイルに批判

 総会は小さな波乱で始まった。同社は今回から、質疑で株主と役員がお互いに着席したままやり取りする新手法を導入したが、2人目の質問者が早くも、このやり方に反発。「他社の株主総会よりやり方が雑だ。話している役員の顔が見えない」などと訴えた。

 加藤社長は、「この方が率直なコミュニケーションができると考え、今年はこの方法でやらせていただきたい。発言者は手を挙げて氏名を申し上げ、わかりやすくしたい」と応じた。

■個人情報流出

 JTBへの不正アクセスに伴い、ドコモが提供している「dトラベル」についても個人情報が外部に流出した。これを踏まえ、セキュリティ対策を問う質問も出た。

 これには吉沢和弘副社長が、「個人情報保護のガイドラインがあり、徹底して守っている。委託先についても、同じような管理をしていたが、今回、高度な標的型メール攻撃と言うことで、すぐに対処できなかったという甘さがあった。管理を進めていきたい」と話した。

■窓口対応に不満

 株主のほとんどはドコモの利用者でもあるため、個別の窓口対応への苦情も出た。

 「高齢の家族が、他社の格安SIMカードを持っていたのにドコモと契約し、二重契約になった」

 「代替機を返す時に個人情報を消してくれと言ったのに断られた」

など。坂井義清副社長は「ご不快な思いをさせて申し訳ない。どこのお店でどんなことがあったか改めて、(総会会場横に設置された)相談コーナーで教えてほしい」と対応した。

■通信料金見直しを質す株主

 また、政府から通信料金の要請で通信料金を見直したことについて、「今後はどのように運用するのか」と株主から心配の声が出た。

 阿佐美弘恭取締役は、「家計消費に占める通信料金がここ10年で2割増えたという指摘もあったが、タブレットとか新端末がそろい、モバイルを使ってショッピングする機会も増えた。原則は競争の中で事業者が切磋琢磨するもので、お客の声を聞きながら、競争環境の中で対応したい」と話した。

 また、加藤社長は26年の新料金プラン導入で、中間決算で1200億円の下方修正につながったことについて、「まだ私の心の傷として残っている」と明かした。そして「その反省も踏まえて、一方ではわかりやすい料金体系と、事業として発展できる内容を両立させるのが経営の根幹だ」と強調した。

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 取締役選任案などの全議案について、原案通り可決し、閉会した。