不動産業界、在留外国人向けサービス強化 中国人社員活用で満足度向上

 
大京穴吹不動産の国際営業チームのメンバー

 不動産業界の間で、中国人社員らを活用することで在留外国人向けのサービス体制を強化する動きが相次いでいる。不動産仲介業の大京穴吹不動産(東京都渋谷区)は国際営業チームを発足。外国人特有の融資手続きや居住ルールの案内を行うなど、総合的なサポートに乗り出した。投資用マンションの販売と賃貸管理を行う日本財託(東京都新宿区)は、中国人留学生居住者を対象とした防災啓発イベントを随時開催する計画だ。

 中国語圏の顧客から大京穴吹不動産に対する問い合わせは年々増えており、15年度だけで約2000件に上った。

 従来は店舗単位で対応していたが、不動産関連は専門用語が多く日本人だけでは細かいニュアンスの伝達が難しい。このため「店舗間で対応力にばらつきがあった」(小走和明常務)。こうした状況を踏まえ、物件探しから購入のローン手続き、引き渡しまでを3人の中国人社員がワンストップで対応できる体制を整えた。

 これによる最大のメリットは、顧客の意にかなった物件を提供できる機会が増える点だ。

 中国人の顧客は土地勘が希薄で漠然なイメージで動くため、想像していた場所とは異なる地域の物件を購入してしまうケースも少なくないという。しかし、予算などをきめ細かに聞き出すことによって希望に近い物件へと誘導できるようになる。また、中国人との交渉では、200万~300万円の値下げ要求など、無理のある交渉から開始することが多い。こうしたケースに遭遇した場合も、会話があれば本心がどこにあるのかを探ることも可能だ。

 今後はチームのスタッフ数を拡大するほかウェブ対応を強化。また、中国語対応を必要とする地元不動産業者との提携などを進めていく。

 日本財託は先月中旬、中国人留学生の斡旋(あっせん)を行う楽商ジャパン(東京都豊島区)と共同で、日本に来たばかりの中国人留学生を主な対象とした防災啓発イベントを池袋防災館(東京都豊島区)で開催した。

 企画したのは中国出身のスタッフが在籍する「国際事業課」。熊本地震の発生後、留学生から不安の声が寄せられたのを機に急遽(きゅうきょ)開催した。短期間の募集にもかかわらず、同社の管理物件に住む約20人が参加し、消火訓練などを体験した。

 参加者からは「避難方法が理解できた」「水や食糧を備蓄しておくことの重要性を知った」といった意見が相次いだ。今後も定期的に実施することで「入居後も高度なフォロー体制を構築している」という点を留学生と中国に住む親に対してアピール。入居者の獲得につなげる。

 2020年の東京五輪に向け、在留中国人の間で住宅の購入や居住をめぐる動きが活発化するのは必至だ。中国人は友達を紹介する傾向が強い。このため居住者の獲得に向けては、いかに顧客満足度を高められるかが鍵を握るだけに、不動産業界の間では同様のサービスが広がるとみられる。(伊藤俊祐)