主役交代、鴻海頼みのシャープ 高橋社長は事実上の「敗北宣言」
シャープの再建は、親会社となる台湾・鴻海精密工業からトップを招いて行われることとなった。2年連続の巨額赤字の計上は、今後のV字回復に向けて赤字を出し切った側面があり、鴻海主導での再建が本格化している。シャープは高橋興三社長が退任を明らかにし、身売り前に最後の“みそぎ”をした形だ。12日に東京都内で開かれた決算会見では、すでに自力再建を諦めたトップの鴻海頼みの姿勢が見られ、主役交代を印象づけた。
「改革は人(の力)による部分が大きく、自分自身では最後までやり切れないことはある。新しい執行部でやっていくと信じております」
決算会見で高橋社長はこう述べ、事実上の「敗北宣言」を行った。2013年の就任から3年。構造改革は遅れ、2期連続の巨額赤字を計上し、ついに債務超過にまで陥った。
高橋社長は赤字については「非常に申し訳なく思っている」と陳謝。ただ就任から3年間の自身の経営責任について問われると「必死にあがいた3年間。今は冷静になってゆっくりと振り返る時期ではない」とかわした。
今後、6月末までに鴻海からの3888億円の出資を待って退任する。次の経営陣が行う構造改革の展望については「出資が終わっていませんので、検討をすることができない」と述べるなど、言及を避けた。
新社長に就任する戴氏は郭台銘会長の側近で、日本語も堪能。ソニーなど日本企業との取引を担当し、シャープ買収でも交渉に当たった実績がある。役員は現在の13人から9人に絞られ、内訳はシャープの指名3人、鴻海指名が6人。鴻海主導での再建が本格化する。
ただ再建は容易ではない。シャープは過去4年間で2度の希望退職を行い、若手を中心に自主的な退職も相次いでおり人材の不足が進む。一方で、削減を含めた人員の適正化や、不採算の太陽電池事業を中心とした事業の整理も不可避な情勢だ。今後、いかに人材を残し、有力な事業を育てるか、戴氏の手腕が問われることになる。
【用語解説】シャープの業績
主力製品である液晶パネルの価格低下やテレビの販売不振により、2012年3月期の連結最終損益が3760億円の赤字、13年3月期は5453億円の赤字に陥った。業績はいったん回復したが、スマートフォンやタブレット端末向け中小型パネルで競争が激化し、15年3月期は2223億円の赤字に再び転落。その後も業績が低迷した。
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