情報漏れに悩む組織が特定のおとり情報をあえて流して発信源を特定する手法はたまに聞くことがある。ただ、それがマスコミや複数の自治体を巻き込んだ騒動に発展したことがある。シャープが経営危機に陥る前の絶頂期、堺市に建設した当時世界最大級の液晶パネルの建設場所をめぐる情報工作だ。関係者が「もう時効だから…」とこっそり教えてくれた。(松岡達郎)
発信源は特定
「シャープが姫路(兵庫県)に液晶新工場」
こんな見出しの記事が某全国紙の一面を飾ったのは平成19年3月のことだ。
記事は、大型テレビ向けの液晶パネルの最先端工場を兵庫県姫路市に建設する方向で最終調整に入ったと報じていた。投資総額は約2千億円になる見通しともされ、本紙を含む複数紙が後追いの記事を掲載した。
しかし同年7月、シャープが大型液晶テレビ向けパネルの新工場の建設発表で建設地となっていたのは堺市だった。主力だった亀山工場(三重県亀山市)を上回る世界最大規模で、共通の部材を使用する太陽電池工場を併設し、部材や装置メーカーの工場も集めるとした。投資総額は液晶だけで3800億円(最終的に4300億円)、地区全体では1兆円規模とした。