陳謝・変化・挑戦…新人に入社式で訴え トップら生き残りへ訓示

 
トヨタ自動車の入社式で、新入社員に辞令を手渡す豊田章男社長(左)=1日午前、愛知県豊田市の本社

 新年度を迎えた1日、企業が一斉に入社式を行った。海外経済の減速や円高などで景気の先行きには不透明感が漂う。不祥事や経営悪化に揺れる企業のトップらが新入社員に信頼回復や再生を呼びかけたほか、好調な企業からも厳しい競争に生き残るため、挑戦を求める発言が相次いだ。

 「会計処理問題の発生に伴い、ご家族を含め、大変なご心配をお掛けし、心よりおわび申し上げます」

 東芝グループが川崎市で開いた入社式は、あいさつした室町正志社長が約930人の新入社員に“異例”の陳謝。「コミュニケーションを大切にしてほしい」と注文したうえで、「再生に全力で取り組んでいただきたい」と呼びかけた。

 台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下入りが決定したシャープ。経営悪化で新入社員は定員の165人より少ない121人となったが、高橋興三社長が「鴻海は成長する東アジアのシンボル。国境を越えた連携の機会が生じる」と訴えた。

 資源安で2016年3月期に初の最終赤字に転落する見通しの三菱商事の垣内威彦社長は「悲観する必要はない。変化への対応力が勝負だ」と奮起を促した。

 民事再生手続きを終えたスカイマークは市江正彦社長が5人の新入社員に「安全運航を第一に、新生スカイマークを一緒に作っていこう」と呼びかけた。日本航空の入社式には、大リーグで活躍した松井秀喜さんが出席したが、システムトラブルで新入社員とのキャッチボールは中止された。

 1日に就任した新トップの発言も注目が集まった。

 くい打ちデータ偽装問題に揺れる旭化成は創業地の宮崎県で入社式を開催。小堀秀毅社長が「コンプライアンス(法令順守)は社会との信頼関係の根幹だ」と強調した。上場後初の入社式となった日本郵政グループでは日本郵政の長門正貢社長が「私も皆さんと同じ初日を迎えた同期。心身ともに健康で成長していきましょう」と呼びかけた。

 業績好調な“勝ち組”企業では、トヨタ自動車の豊田章男社長が「成功体験や理屈だけでは持続的成長は望めない。自ら進んでバッターボックスに立ち、フルスイングしてください」と要請。今期に30期連続の増収増益を見込むニトリホールディングスの似鳥昭雄会長も「会社は自己成長のためにある。たくさん挑戦してもらいたい」と述べた。

 厚生労働省によると、2月時点の推計では、今春の新入社員は約77万人。