STAP細胞の論文不正は小保方晴子氏の個人の問題だけでなく、自浄作用が働かない理化学研究所の根深い体質を浮き彫りにした。
理研は論文に疑義が浮上した2月以降、科学界が求める実験の生データを公開せず、情報開示に消極的だ。研究の根幹に関わる多数の疑義が指摘されたにもかかわらず、調べたのは画像や文章の一部だけで、1カ月足らずの拙速な調査で研究不正の結論を出した。
政府は当時、大型予算が投入される「特定国立研究開発法人」(仮称)に理研を指定することを検討中だった。理研は事態を矮小(わいしょう)化することで、早期幕引きを狙ったとみられる。
その後も細胞の万能性の証拠となる画像などに疑義が相次ぎ浮上しているが、理研は小保方氏が論文撤回に同意していることなどを理由に調査を拒んでいる。胚性幹細胞(ES細胞)の混入を疑わせる重大な解析結果が外部から提供されても自ら公表しておらず、臭い物に蓋をする姿勢と言わざるを得ない。
改革委員会は理研について「自浄作用が全く機能しない非常識な体質」と厳しく指弾した。恒常的な不正監視機関の設置を突き付けたのも、不信感の表れにほかならない。理研が組織の浄化にどこまで真剣に取り組むかは未知数だ。
日本の持続的発展には、科学技術のイノベーション(技術革新)が必須だ。それには国内最高レベルの巨大研究機関である理研の再生が欠かせない。STAP問題で国民の科学への不信は増大しており、理研は小手先の対応ではなく、不正の真相を究明する責任がある。(伊藤壽一郎)