CLWの報告書を読むと、もっと衝撃的な事が書かれていました。CLWは、この工場で今年の7月25日に開かれた学生インターン採用に関する会議のメモを極秘入手したのですが、それによると、大量の学生インターンに頼らねば、「アマゾン・エコー」などアマゾンのスマートスピーカー関連商品の生産目標が達成できない可能性があると判明したのです。
このメモでは、学生は一般的な派遣労働者よりも安価で雇われ、彼らは普通の労働者の代わりに、労働者が足りなくなる生産期間のピークをカバーする存在である、などと書かれていたのでした。
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実は、このフォックスコンの衡陽工場では昨年6月、「アマゾン・エコー」などアマゾンのスマートスピーカー関連商品の生産期間のピーク時に、人件費を削減するため、法令で定められている以上の派遣社員を雇用し、多くの従業員に法令が定める月36時間をはるかに超える残業を強いていたことが判明したのです。アマゾン側はこの事実を認め、フォックスコン側に監視強化を含む再発防止を徹底させるとともに、派遣社員への依存体質を改め、彼らが正社員になるための門戸を開かせました。
ところが、またもやアマゾンの同じ製品の生産ラインで、こうした不祥事が発覚したことになります。今回の不祥事について、アマゾン側の広報担当者は「違反を発見した場合、フォックスコン側ら対し、直ちに是正措置を求める適切な措置を講じる」との声明を発表。調査のための専門チームをこの工場に派遣したと説明しましたが、CLWの報告書は、アマゾン側は昨年6月の一件ととともに、今回の件も最初から知っていた可能性があるなどと、厳しく断罪しています。
この一件を報じた8月9日付の英紙デーリー・メール(電子版)の読者投稿欄には「中国製品を購入するということは、こうした安価な労働力を酷使する中国の労働形態を支持することと同じだ」「現代の奴隷労働だ」「なぜこんなに値段が安いのか考えるべきだ。社会にモラルを問い直す時だ」といった意見が並んでいます。
(岡田敏一)
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【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家、産経ニュースで【エンタメよもやま話】など連載中。京都市在住。
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