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La Traviata Opera at Masada ユダヤ砂漠の真ん中で「椿姫」

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La Traviata Opera at Masada ユダヤ砂漠の真ん中で「椿姫」

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舞台となる19世紀の華やかなパリの裏社交界を、コンテンポラリー・ダンスとの融合でこれまでにない椿姫の世界観を作り上げている=2014年6月18日、イスラエル・マサダ(佐藤良一さん撮影)  イスラエル東部、荒涼としたユダヤ砂漠の真ん中で、野外オペラ・フェスティバルが開催された。紀元前1世紀に築かれたマサダ(要塞)の麓が会場となる。4回目と歴史は浅いが、オンリーワンのオペラとして国内外から注目を集めているという。

 今年の演目はジュゼッペ・ヴェルディの代表作「La Traviata(椿姫)」。夜9時半開演。開催した6月は日本よりもずっと日が長い上に、地表で最も低い海抜マイナス418メートルの死海と隣り合わせ。夜の砂漠であっても日本の夏並みの蒸し暑さだ。

 観客は、椅子の上に用意されていた扇子をせわしなくあおぎながら、これから始まる椿姫を楽しみにしているのが、笑顔からうかがえる。ようやく空が漆黒に包まれる頃、ぼんやりと浮かび上がるマサダをバックに舞台は幕を開けた。

 ≪離散が生んだ踊り 舞台と融合≫

 荒野の砂漠にオーケストラが奏でる「乾杯の歌」が響く。華やかに、それでいて巧みな心理描写を精緻するように物語が進んでいく。

 レーザープロジェクションを駆使した舞台、ウサギの耳をつけたシルクハットをかぶって歌う男性、ネオン管を配したドレスをまとって踊る女性-。一風変わった演出に戸惑いも覚えたが、それこそがマサダのオペラなのである。

 「特別な場所で、これまで体験したことのないオペラで、この国の魅力を表現したかった」。イスラエル・オペラ責任者のハンナ・ミュニッツ氏が話す通り、オペラとコンテンポラリー・ダンスを融合した演出こそが、イスラエルらしさとなる。

 マサダを最後に世界中に離散したユダヤ人が、建国を機に諸国の文化を持ち帰り、融合して生まれたのがイスラエルのコンテンポラリー・ダンスだからだ。

 そのマサダで、イスラエルが誇る舞台芸術を駆使して演じられた椿姫だった。

 それは世界唯一の特別なオペラとなり、真夜中の砂漠にいつまでもこだまする7500人もの観客の拍手が、その素晴らしさを物語っていた。(文:フリーライター 鈴木博美/撮影:写真家 佐藤良一(りょういち)/SANKEI EXPRESS

 ■マサダ ヘブライ語で「要塞」を意味する。紀元70年、ローマ軍によって陥落したエルサレムから生き延びたユダヤ人が最後のとりでとして抵抗を続けた場所。ローマ軍の圧政に力及ばずマサダも陥落、その時に捕虜になることをいとい、女性と子供計7人を残し集団自決した。この時からユダヤ人は、1948年にイスラエルが建国されるまで、世界中に離散することになった。以来、この地はユダヤ民族結束の象徴となっており、2001年に世界文化遺産に登録された。

 ■すずき・ひろみ ライター。旅を通じて食や文化、風土を取材し、雑誌などに海外各地の旅の記事を寄稿。著書に電子書籍「OL一人旅レシピ」インド編、ベトナム・カンボジア編、エジプト編。「いつもの食材で作る世界の料理レシピ」など。ブログ「空想地球旅行」で旅のあれこれを発信中。

 ■さとう・りょういち 写真家。物語のある街を題材に旅行系の媒体で活躍中。旅先で出会った「色」を大切に撮影。ジャンルは問わない。著書に「パラオ海中ガイドブック」(阪急コミュニケーションズ)など。

 【ガイド】

 イスラエルのイベント情報は、イスラエル大使館の公式Facebookで確認できる。

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