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【Q&A】汚染水対策 地下道せき止める「氷の壁」凍らず

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【Q&A】汚染水対策 地下道せき止める「氷の壁」凍らず

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東京電力福島第1原発2号機の海側で、トレンチの凍結に向け準備を進める作業員。地中にトレンチが通っている=2014年7月29日、福島県(東京電力提供)  東京電力福島第1原発で、トレンチと呼ばれる地下道にたまった高濃度汚染水を抜き取るため、タービン建屋との接続部を「氷の壁」で遮断する工事がうまく進んでいません。東電は、セメントなどの止水材を投入する追加対策を進める方針を示しました。

 Q トレンチとは何ですか

 A 福島第1原発の建屋海側にある地下道で、電源ケーブルなどが通っています。事故で溶けた燃料を冷却した後の汚染水がたまるタービン建屋の地下ともつながっています。2、3号機のトレンチには約1万1000トンの高濃度汚染水がたまっているとみられます。

 Q 「氷の壁」とはどんな工事ですか

 A 東電は建屋とトレンチの接続部を凍らせて水の流れを止める「凍結止水」という方法を選びました。水中に凍結管を入れ、水を壁のように凍らせます。建屋とトレンチを行き来する水をせき止めてからトレンチの水を抜く計画で、2号機で先行して始めました。

 Q 対策の重要性は

 A トレンチは震災で壊れ、汚染水が地中を通って海に流出している恐れがあり、水抜きを急ぐ必要があります。さらに、東電は建屋周囲の地盤を凍らせて地下水をせき止める「凍土遮水壁」を建設中ですが、トレンチの水を抜かないと遮水壁はつくれません。

 Q 氷の壁の現状は

 A 4月に凍らせ始めましたが、うまく凍らない場所が残っています。水温を下げるため、凍結管を増やし、7月下旬からは氷やドライアイスを毎日大量に入れていますが、凍結は92%にとどまっています。

 Q 凍らないのはなぜですか

 A 氷投入などで凍った範囲は増えましたが、壁と凍結管の間やケーブルの周りなどに隙間が残っています。隙間が狭まったことで、トレンチと建屋を行き来する水の流れが速くなり、かえって凍りにくくなってしまったようです。こうした隙間を止水材で埋め、水流を抑えて凍りやすくするのが追加対策です。

 Q 止水材とはどんなものですか

 A セメントに粘り気を調整する薬剤などを混ぜた「グラウト」と呼ばれるドロドロの液体を流し入れて、固めることを検討中です。

 Q うまくいきますか

 A セメントが固まると化学反応で熱を発するため、せっかく凍った氷が溶けてしまう恐れがあります。隙間が残ったまま固まる可能性もあり、専門家からも不安の声が出ています。

 Q 心配ですね

 A 一度、止水材を流し込むとやり直しができません。東電は模擬実験をした上で、9月に原子力規制委員会の会合に結果を報告し、止水材の種類や投入方法などを最終判断する予定です。

 ≪事故直後の課題 なお道筋示せず≫

 トレンチにたまる高濃度汚染水の抜き取りは、事故発生直後から懸案となっていた課題だ。

 「止水材の投入で本当にうまくいくのか。非常に不安だ」「戦略的に冷静に考えないと泥縄的にずるずるいってしまう」

 8月19日に開かれた原子力規制委員会の廃炉作業に関する会合。東電が現在の対策だけでは2号機のトレンチ凍結は困難だと認め、止水材の投入など追加対策を実行することを説明すると、外部専門家から厳しい意見が相次いだ。

 7月に始めた氷やドライアイスの投入で、8月中旬にもトレンチを凍結できると踏んだ目算が外れ、東電の姉川尚史常務は「凍結の望みがないわけではない。手を尽くしてみたい」と苦々しい表情で応じるしかなかった。東電は汚染水対策の柱と位置付ける「凍土遮水壁」の設置工事を来年3月末までに終え、建屋に流れ込む汚染水の量を大幅に減らしたい考えだが、トレンチ凍結と高濃度汚染水の抜き取りが前提。入り口で足踏みが続く現状に、会合では「凍土遮水壁でも同じことにならないのか」と懸念の声が漏れた。(SANKEI EXPRESS

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