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川内原発「合格」 今秋にも再稼働 規制委、火山やサイバーテロ対策評価

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川内原発「合格」 今秋にも再稼働 規制委、火山やサイバーテロ対策評価

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図表を使いながら新規制基準の要点などについて説明する原子力規制委員会の田中俊一(しゅんいち)委員長=2014年7月16日、東京都港区の原子力規制委員会(大里直也撮影)  原子力規制委員会は7月16日の定例会で、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の事実上の合格証となる「審査書案」を了承した。昨年(2013年)7月の審査開始から約1年を経て、新規制基準に基づく安全性を確認した。

 審査申請中の12原発19基のうち、川内は重大事故や地震、津波対策を強化した新規制基準の合格第1号となり、地元の同意などを経て今秋にも再稼働する。

 規制委の田中俊一(しゅんいち)委員長は16日午後の定例会見で「もう少し早くまとめられるかと思ったが、時間がかかった。これで十分という気持ちはないが、考えられることについて評価している。一つのヤマを越えた」と話した。

 川内1、2号機は福島第1原発とは異なる加圧水型軽水炉(PWR)で、九電は昨年(2013年)7月8日の新基準施行当日に審査を申請した。

 審査書案は418ページで、「施設の設計基準」と「重大事故対策」の大きく2つに分けて記載。地震、津波、竜巻、火山の噴火などの自然災害を個別に評価し、重大事故が起きた場合にどういう対策が取られているかを詳細に記述した。

 審査書案によると、耐震設計の目安となる基準地震動(想定される最大の揺れ)を最大加速度620ガルなどとより厳しくしたほか、想定する最大の津波の高さも約6メートルに引き上げた。周辺火山(カルデラ)の巨大噴火に伴う火砕流などで影響を受ける可能性を「(九電が)十分小さいとしていることは妥当」と記述、「新規制基準に適合している」と結論付けた。

 審査書案は17日から意見公募(30日間)にかけられ、修正を経た上で8月下旬以降にも確定。今後は対策工事の詳細な設計内容を記した「工事計画認可」などの審査に移り、地元自治体の同意や規制委による原発機器の使用前検査を経て再稼働となる。

 ≪原子力規制委、火山やサイバーテロ対策評価≫

 原子力規制委員会が了承した川内(せんだい)原発1、2号機の審査書案は、原発の安全性を判断する上での最先端の知見が詰まっており、今後の審査における“合格証”のモデルとなるものだ。

 審査で最も重視されたのが、地震や津波に対し有効な対策が取られているかだ。

 基準地震動(想定される最大の揺れ)の確定では九電と規制委との見解が当初は大きく食い違ったが、2度の修正を経て九電側が620ガルと厳しい基準に歩み寄った。津波に対しても、防潮堤の設置や浸水防止がいかになされているかデータ分析をした上で、「国内のみならず世界で起きた大規模な津波事例を踏まえ、不確かさを考慮して(対策が)行われている」との見解を示した。

 さらに問題となったのが火山対策だった。現在の審査申請原発のうち、川内原発は火山の噴火で最もリスクの高い原発と懸念されていたからだ。

 審査会合の中で九電は、川内から約50キロ離れた桜島など、敷地から半径160キロにある39カ所の火山が噴火するかどうかの想定データを提示した。巨大噴火は1万年に1回程度と頻度は極度に低いが、火山が噴火すれば原発周囲に火山灰が積もり、火砕流で送電線や注水ポンプなどに影響が出る可能性が考慮された。

 規制委は新基準とは別に火山影響を評価するガイドを作成し、必要な地点に地殻変動の監視のため衛星利用測位システム(GPS)を置くように九電に要請した。

 新基準のテロ対策では、原子炉建屋に故意に航空機が突っ込んできても耐えられる構造を要求する。審査書案では、放水砲を用いた消火の手順や現場へのアクセスも確認し、「設備などが同時に機能喪失しないよう十分な配慮を行うなど、適切なものと判断した」と記した。

 サイバーテロも審査項目に入れた。「情報システムに対する外部からのアクセスを遮断する設計とする」という九電の申請を、審査書案では「核物質防護対策として確認した」とし、新基準への適合を強調した。(SANKEI EXPRESS

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