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ALPS能力 規制委が「お墨付き」 汚染水処理「審査書案」作成へ

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ALPS能力 規制委が「お墨付き」 汚染水処理「審査書案」作成へ

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多核種除去施設(ALPS)を視察する福島県原発廃炉安全監視協議会のメンバーら=2014年8月6日午後、福島県双葉郡大熊町・東京電力福島第1原発(代表撮影)  東京電力福島第1原発の汚染水処理の“切り札”で東電が12月に本格稼働させる「多核種除去装置(ALPS(アルプス))」について、原子力規制委員会が汚染水処理の有効性を保証する「審査書案」をまとめることが8月12日、分かった。規制委の更田豊志(ふけた・とよし)委員による検討会合で有識者メンバーらの意見を聴取した上で、規制庁が書面作成に着手する。規制委が事実上の「合格証」を与えることで、処理水の海洋放出への不安を和らげる狙いもある。

 東電は当初、3系統あるALPSの本格稼働を今年4月に予定。2月には規制委にALPS稼働の申請を行っていたが、配管の腐食や放射性物質を除去するフィルターの故障など不具合が相次ぎ、延期を余儀なくされた。東電は「これまで試験運転で経験してきた不具合解決に決着が付いた」として12月の本格稼働を公表。本格稼働に向け規制委に補正申請を提出し、規制庁が汚染水処理での有効性を確認する段階に入った。

 東電は10月までに改良し、審査書案では、改良により課題が解決できたかを最終的に確認する方針だ。

 ALPSの処理水からはコバルト60など4種の放射性物質がまだ比較的高い濃度で検出されている。このため、放射性物質を取り除く吸着材を変更し、吸着塔を18基に増やすことで4種の濃度を大幅に低減させられるように改良する。

 また、設備の耐久性については、応急的に製造されたため溶接などが不十分である可能性があり、改めて耐久性を確認し原子力規制委員会へ報告する。さらに、作業員の被曝(ひばく)管理の徹底なども進める。吸着塔増設と耐久性検査は10月には完了し、規制委の使用前検査を受け本格稼働する。

 一方、増設中のALPSと国費で整備を進める新型ALPSも12月中に本格稼働を始める方針だ。現在の3系統では最大1日750トンの汚染水を処理するのが限界だが、12月以降は約3倍の最大1日2000トンの浄化ができるようになる。

 第1原発のタンクなどには現在約40万トンの汚染水が保管されている。ALPS本格稼働などの対策により「今年度内に処理することが可能」(東電)となる。規制委の田中俊一委員長は「汚染水はALPSで早急に処理するのがプライオリティー(優先)だ」と述べている。(原子力取材班/(SANKEI EXPRESS

 ≪北陸電、志賀原発2号機の安全審査申請≫

 北陸電力は8月12日、志賀原発2号機(石川県)の再稼働に向けた安全審査を原子力規制委員会に申請した。新規制基準に基づく審査申請は計13原発20基目となり、北陸電の申請で、原発を持つ電力会社10社がすべて申請したことになる。

 志賀原発は東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)。1号機(54万キロワット)と2号機(135.8万キロワット)の2基あるが、営業運転開始が2006年と新しく、出力が大きい2号機を優先させた。

 基準地震動(想定される最大の揺れ)は、近傍の活断層である「福浦断層」などを考慮し当初の600ガルから1000ガルに変更。基準津波(想定される津波の高さ)も5メートルから7.1メートルに引き上げた。

 志賀原発をめぐっては、規制委の専門家調査団が敷地内の破砕帯(断層)が活断層かどうか調査中で、評価会合を2度開いているが、結論が出ていない。本格的な審査に入るためには破砕帯調査の決着が前提で、志賀の審査は長期が予想される。

 北陸電の西野彰純(あきずみ)常務は申請後、「敷地内断層は将来活動する断層(活断層)ではないと自信を持っている」と話していた。(SANKEI EXPRESS

 ■多核種除去装置(ALPS) 汚染水に含まれる63種の放射性物質のうち、現在の技術では除去が難しいトリチウム(三重水素)を除く62種を除去できる設備。フィルターにより放射性物質をこし取る「前処理設備」と、活性炭などの吸着材を利用し汚染水から放射性物質を分離させる「吸着塔」を通す仕組みで処理を行う。AからCの3系統が造られ、1系統で1日250トンの処理が可能。

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