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【東日本大震災3年】東電 若手流出、見えぬ再建の道

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【東日本大震災3年】東電 若手流出、見えぬ再建の道

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東京電力福島第一原発の免震重要棟で、地震発生時刻に合わせ黙祷(もくとう)する社員ら。左端は広瀬直己社長=2014年3月11日午後2時47分、福島県双葉郡大熊町(代表撮影)  福島第1原発事故から3年を迎えた東京電力では3月11日、広瀬直己社長(61)が「たやすい道ではないが、しっかり心を一つにして仕事に当たっていきましょう」と福島第1原発の免震重要棟で社員ら約100人に呼びかけた。廃炉作業や汚染水処理など難題が山積する中、有望な若手が会社を去るなど、人材流出が止まらない。東電再生の頼みの綱となるのは柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働だが、見通しは不透明なままだ。

 7割が20、30代

 広瀬社長が「心の共有」を強調せねばならなかったように、会社での希望が見えず、辞めていく社員が後を絶たない。事故前に年100人程度だった自主退職者数は、2011年度465人、12年度712人、13年度は4月から12月末までに315人。深刻なのは、その7割が20~30代の若手で、4割が経営幹部候補や原子力技術者などの中核社員であることだ。

 事故後に一般社員の基本給は20%、管理職も30%削減され、今も続いていることが理由の一つ。平均給与(勤続年数22年、平均年齢42歳)は、事故前の10年度の761万円から12年度は620万円に下がった。

 再稼働も不透明

 今年1月にまとめられた東電の再建計画である「総合特別事業計画」では、さらなるリストラを迫っている。50歳以上の社員を対象とする1000人規模の希望退職者(グループ全体で2000人規模)を募集し、10カ所の支店廃止も決めた。

 燃料費削減などと合わせて計画を実行すれば、10年間で4.8兆円のコスト削減となる。4月から取締役会長に就任する数土(すど)文夫・JFEホールディングス相談役(73)は1月の会見で「不退転の決意で再建に身命を賭(と)したい」と決意を語ったが、新潟県の泉田裕彦知事は「(計画は)絵に描いた餅にすぎない」と切り捨てる。

 東電と新潟県の対立が、経営再建の柱となる柏崎刈羽原発の再稼働に波及。今夏までに6、7号機の再稼働を見込むが、地元調整が原発の重要施設の運用にまで及び、原子力規制委員会の安全審査は事実上、止まった。

 経営再建と福島第1原発の廃炉の両立を目指す前途は依然厳しいままだ。(原子力取材班/SANKEI EXPRESS

 ≪包括提携交渉難航 駆け引き激化≫

 東京電力は1月に政府が認定した新たな総合特別事業計画(再建計画)で経営改革を急ぐが、柱と位置づけた「燃料・発電部門」の包括提携交渉は難航している。事実上国有化された東電と組む場合、提携企業が「社外秘の情報を国に握られる」(大手電力関係者)と懸念するためだ。ただ、首都圏の電力市場を握る東電との提携はメリットも大きく、水面下の駆け引きは激しさを増している。

 東電は、原発事故の処理や損害賠償に多額の費用が必要で資金力に乏しい。このため東電は「燃料調達から発電所の建て替えまで丸ごと他社と手を結ぶ」(幹部)ことで競争力を強化し、電力小売りの全面自由化に備える考えだ。

 実現すれば、火力発電用の液化天然ガス(LNG)調達量が現在の2倍近い年3500万~4000万トンに増えるため交渉力が強まるほか、老朽化した計1000万キロワット分の火力発電所も建て替えられるとしている。

 提携先としては中部電力や東京ガス、大阪ガスなどが有力視される。また、4月に「電気事業部」を新設して電力小売りに本格参入する石油元売り最大手、JX日鉱日石エネルギーも東電との提携効果を見極めているもようだ。

 このほか4月に東電会長に就任する数土(すど)文夫氏が相談役を務めるJFEホールディングスが、中国電力と組んで名乗りを上げるとの噂もささやかれている。両社は広島、岡山両県で火力発電設備を共同運営する。原発の少ない中国電は、他電力に比べ原発停止による業績影響が少ないとみられている。

 ただ、東電は提携先と共同出資会社を設立した場合、出資比率を3割程度に抑えた上で、発電量の半数以上を販売用電力として確保する考えだ。あるエネルギー大手は「虫が良すぎる」と反発する。

 さらに、東電の発行済み株式総数の約55%は、政府の原子力損害賠償支援機構が握っている。交渉相手の一社は「東電と提携すれば規制当局に情報が筒抜けになってしまい、当社に不利な条件やルールを無理やり押しつけられる可能性がある」と懸念する。

 提携には不安も多いが、他社と組んだ東電を敵に回すのもリスクになる。エネルギー大手は「『前門の虎後門の狼(おおかみ)』の心境」(関係者)と打ち明けた。(SANKEI EXPRESS

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