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イスラム国 「かつてない脅威」 米政府、身代金拒否 欧州との足並み乱れ懸念

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イスラム国 「かつてない脅威」 米政府、身代金拒否 欧州との足並み乱れ懸念

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シリア北部ラッカ県でパレードするイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」のメンバー。米国はシリア国内で活動するイスラム国を空爆する選択肢を排除していない=撮影日時不明(AP)  イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に米国人ジャーナリストが殺害されたことで、オバマ米政権のイスラム国に対する脅威認識が増幅され、政権に軍事行動の拡大を求める圧力が強まっている。チャック・ヘーゲル国防長官(67)は8月21日、シリア国内で活動するイスラム国を空爆する選択肢を排除しなかった。これまでの「対症療法」から踏み出すことも視野に、今後の対応が検討されていることをうかがわせる。

 「テロ組織の域を越えた」

 国防総省で記者会見したヘーゲル長官は「イスラム国は洗練された戦略と、戦術上の軍事能力、莫大(ばくだい)な資金を有し、テロ組織の域を越えている。これまで目にしたことがない組織だ」と危機感をあらわにした。

 そのうえで、2001年の米中枢同時テロのように、米本土が攻撃されることも含め「あらゆる事態に備える必要がある。長期的な戦略を追求し、あらゆる選択肢を検討している」とし、シリアでの空爆も排除しなかった。

 同席したマーチン・デンプシー統合参謀本部議長(62)も「シリア国内のイスラム国の分子に対処せずに組織を打倒できるか、と問われればノーだ。打倒するには(イラクとシリアの)両側で対処しなければならない」と語った。

 こうした戦略の模索と、脅威認識の強まりの背景には、イラクで継続されている限定的な空爆だけでは、「イスラム国は態勢を立て直し新たな攻勢に出る」(ヘーゲル長官)との認識がある。「(米国人の)殺害は米国への宣戦布告で、大規模な空爆などが必要だ」(マルコ・ルビオ上院議員)などの声が、勢いを増していることも要因だ。

 シリア空爆も選択肢

 米軍事専門家は当面とるべき措置として、空爆を拡大しイスラム国の補給源と補給路などを断ち、戦闘員のイラクとシリアの往来を遮断することを提唱する。

 シリアでの空爆については、攻撃目標を選定する米軍要員がまだ投入されておらず、イスラム国への攻撃は、米政府が打倒を目指すアサド政権を利するというジレンマも抱えている。このため現時点では、長期戦略における選択肢の一つという性格が強そうだ。

 バラク・オバマ大統領(53)は「(軍事介入が)『終わりが見えない展開』となることは、許さない」との原則を堅持している。軍事行動を拡大する場合でも、「有志連合」による作戦とする可能性がある。(ワシントン 青木伸行/SANKEI EXPRESS

 ≪米政府、身代金拒否 欧州との足並み乱れ懸念≫

 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に殺害された米国人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー氏(40)の身代金を支払うようイスラム国が求めていた問題で、米政府は8月21日、今後も人質釈放の見返りを与えない姿勢を明確にした。ただ、欧州や中東には身代金による解決を黙認している国もあり、米政府は足並みの乱れに懸念を強めている。

 米国務省のマリー・ハーフ副報道官(33)は21日の記者会見で、イスラム国から米政府などに対する身代金要求については確認を避けながらも、「米国は身代金の支払いを含めてテロリストに譲歩しない」と強調した。

 ハーフ氏は今年だけでイスラム国が数百万ドル(数億円)の身代金の支払いを受けたことを明らかにした。また、「イスラム国の主な資金源は、他国から支払われている身代金だ」と懸念を示した上で、「資金源や作戦遂行能力を絶つ必要がある」と訴えた。

 AP通信によると、イスラム国はフォーリー氏の家族に対し、数カ月にわたり1億3250万ドル(137億6000万円)の身代金を要求。米政府にもイスラム国に対する政策変更などを求めてきたという。

 米国の非営利団体「ジャーナリスト保護委員会」の調べでは、約20人のジャーナリストがシリアで行方不明となっている。少なくとも3人の米国人が拘束されているとみられる。

 ただ、2001年の米中枢同時テロ後に制定された「愛国者法」はテロ集団に金銭を支払うことを禁じており、米政府は身代金による解決は念頭にない。味をしめたテロリストにより「海外で活動する米国人が拉致される危険性が高まる」(ハーフ氏)からだ。米政府は同様の政策をとる英国とともに各国に身代金の支払いを行わないよう促しているが、国によって温度差がある。

 AP通信はフランスやカタールが身代金の仲介に関与していると指摘。米誌フォーリン・ポリシー(電子版)も、イスラム国が今年始めに釈放したフランス人4人、スペイン人2人に政府側から身代金が支払われた可能性があると伝えた。(ワシントン 加納宏幸/SANKEI EXPRESS

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