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外環の外側が神秘的なものに思えた 映画「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」 ジャンフランコ・ロージ監督インタビュー

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外環の外側が神秘的なものに思えた 映画「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」 ジャンフランコ・ロージ監督インタビュー

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「金獅子賞をいただけるなんて今だに信じられません」と語るジャンフランコ・ロージ監督=2014年5月1日、東京都渋谷区(早坂洋祐撮影)  全長70キロ、1日の交通量はざっと16万台-。ローマをぐるりと囲む外環高速道路「GRA」の周囲に生きる人々の日常を追ったドキュメンタリー映画が、昨秋(2013年)の第70回ベネチア国際映画祭を大いにわかせた。ドキュメンタリー作品としては史上初めて金獅子賞(最高賞)に輝いたのだ。作品のタイトルも内容そのままに「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」。プロモーションで来日したジャンフランコ・ロージ監督は「私の作品に登場するローマはGRAの外側の部分。普段、皆さんが意識すらしない、見たこともないローマの姿ばかりでしょう」とウインクした。

 「外側」に生きる存在

 ロージ監督はイタリアの国民的作家、イタロ・カルヴィーノ(1923~85年)の「見えない都市」(72年)を読み、都市と住人が生み出す混沌(こんとん)とした世界に関心を持った。ほどなくドキュメンタリー映画で彼の小説の世界に肉薄しようと考え、制作に着手したという。

 ヤシの木につく害虫の研究に執念を燃やす植物学者、テヴェレ川でウナギを釣るボート生活者の漁師、ブルジョアを装う没落貴族の夫婦、狭いアパートの一室でたわいもない話を延々と続ける年の離れた父と娘…。カメラはGRAの外側に生きる人々に寄り添い、その心象風景を優しく切り取っている。「彼らの存在ってフィクションよりも面白いでしょう」。ロージ監督は胸を張った。

 「アウトサイダー」は本作のキーワードだ。映画に登場する観光名所のほとんどが集中するGRAの内部には目もくれず、登場人物もちょっと風変わりな人ばかり。ロージ監督は「2つの異なるローマがあったとしたら、当然、知らない方に興味を持ちます。私ですらGRAの外側は知らない場所ばかりです。映画の原題を『聖なるGRA』(Sacro GRA)としたのは、GRAの外側が神秘的なものに思えたからですよ」と説明した。

 まさかの金獅子賞

 実際、映画化の発端となったカルヴィーノもキューバ生まれのパルチザンであるし、ロージ監督はアフリカ・エリトリア生まれのトルコ育ち。さらに言えば、米ニューヨークに移住し、ニューヨーク大学映画学科を卒業後は、インド全土を旅し、中編「Boatman(原題)」の監督を務め、名だたる映画祭で多くの賞を手中におさめた。行く手にはいつも「アウトサイダー」という立ち位置を想起させる生き方が顔をのぞかせる。ベネチア国際映画祭の授賞式に「まったくの普段着」で出席したのも実に彼らしい。

 「普通は蝶ネクタイにタキシード姿で出席するものですが、私はベネチアにそれらを持っていきませんでした。だってドキュメンタリー映画が金獅子賞に輝くなんて統計的にもあり得ないことでしたからね。僕は史上初めて普段着で受賞スピーチをした映画監督でしょう」。8月16日から全国順次公開。(文:高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS

 ■Gianfranco Rosi エリトリア・アスマラ生まれ。イタリアと米国の国籍を持つ。2008年、カリフォルニアで撮影した初の長編作「Below Sea Level」がベネチア国際映画祭オリゾンティ賞などに輝いた。メキシコの麻薬カルテルの元暗殺者を登場させた10年「El Sicario - Room 164」でベネチア国際映画祭の国際批評家賞などを受賞。

 ※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと 、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2014年8月20日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

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