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妖精たちが住む奇岩の森と空中散歩 トルコ・カッパドキア

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妖精たちが住む奇岩の森と空中散歩 トルコ・カッパドキア

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 【大人の時間】

 東洋と西洋の文化が出合う国、トルコ。そのトルコ観光のハイライトは、巨大な奇岩群が織りなす大自然の彫刻、カッパドキアだ。1985年に世界遺産に指定されたこの地には、妖精たちが住まうとされるキノコ岩の数々や、古代修道女らが暮らした洞窟教会などがあり、訪れる旅人を別世界にいざなってくれる。早朝、気球に乗って日の出を拝み、奇岩の森の空中散歩を楽しめば、ファンタジックなパノラマが眼前に広がる。

 ラクダ岩、キノコ岩…

 トルコ最大の都市、イスタンブールの空港から国内線で1時間余のフライトでカイセリ空港に到着。海抜1000メートル地帯の平原を車で約1時間も走ると、いつしか巨岩や奇岩が林立する山中に足を踏み入れたことに気づく。カッパドキアは火山地帯であったこの地一帯の総称。昨年秋には日本人女子大生が襲われ死傷する痛ましい事件が起きたが、本来は治安もよく人気の観光スポットだ。

 山の中腹、「イマジネーション(想像)の谷」といわれる地では、まるで砂漠を行くラクダが前を向いて今にも歩きだしそうな「ラクダ岩」に出合える。後ろを振り向けば、ナポレオンの帽子、ペンギンたちの群れ、キスをする2羽の小鳥…を想像させる珍しい岩々が林立。思わずシャッターを切る観光客の列が絶えない。

 キノコの形をした岩が最も多く残るパシャバーでは、眼前に高さ数メートルの岩がいくつも迫る。奇岩の生い立ちは、噴火によって火山灰と溶岩が積み重なり、何万年、何百万年と経るうちに、雨水などによって地層が浸食されてできた。浸食されやすい地質の火山灰が先に細り、三角の形をした溶岩(玄武岩や凝灰岩)をてっぺんに載せているのがキノコそっくりというわけだ。しかし、火山灰が細りすぎた場合、支えきれなくなったキノコの“傘”は落下し、単なる三角岩と化してしまっている。

 「パシャバーには後500年もすれば三角岩になってしまうキノコ岩や、これから1000年後にキノコ岩になる候補の岩などが混在しています」(日本語ガイドのオメル・サイマズさん)。実際、地震でも起きれば今にも傘が落ちてきそうなキノコ岩の周辺にロープが張られ、「近づくな、危険」の注意書きも。近くの小高い山に登りキノコ岩の群れを見下ろすと、大自然が刻んだ“彫刻の森”に、不思議な感慨を覚えずにはいられない。

 洞窟教会と壁画

 次に訪れたのが、ギョレメ野外博物館。ギョレメとは「見てはいけない」の意で、宗教を禁止するローマ帝国に追われた修道士や修道女らが、紀元4、5世紀のころから洞窟を掘って教会や修道院をつくり、ひっそりと暮らしていたといわれている。このため、地質は掘りやすい火山灰であったそうだ。

 博物館の中に約15の洞窟教会や倉庫、食堂が残っており、教会には信徒が描いた壁画が大切に保存されている。中には、白ひげと乳房をたたえた不思議な像なども描かれ、神秘的な伝説に触れられる。洞窟に入ると夏場でもひんやりとするほどだ。博物館ではちょうど結婚式が行われ、花嫁衣装の新婦に出会えたが、「神聖な地で人生の門出を祝う若者たちも増えている」(オメルさん)という。

 気球から大パノラマ

 カッパドキア観光の呼び物といえば、気球に乗って大空から奇岩群を眺めるツアー。星空の美しい夜明け前に、定員20人の気球の籠に乗り込むと、パイロットのイスマイルさんが4つのレバーを器用に操りながらバーナーの火を調節し、ふわりと地上に浮かび上がる。大空高く舞い上がるとさすがに足がすくんだが、次第に高度を下げ岩山の谷に沿って奇岩や巨岩すれすれに空中を散歩する。白や薄いピンクの岩肌を眺めながら、大自然の威容に改めて感動する瞬間だ。そのうちに朝日が地平線を真っ赤に染めて顔を出すと心が洗われる。

 着地するとイスマイルさんがシャンパンを開けて参加者に振る舞い、無事に飛行が終了したことを祝して全員で乾杯。参加者一人一人に名前が書かれた認定証が手渡されるのもうれしい演出だ。

 1カ月がかりなら4万円

 一方、カッパドキアには伝統的なトルコじゅうたんを販売するハドサン社がある。カッパドキアの6万人の女性が織ったじゅうたんを預かり販売する。ハドサン社には工房もあり「母に習い40年間じゅうたんを織っている」というアイテンさん(50)は図案を見ながら器用に縦糸に横糸を絡ませる。「2年に一度刈る羊の毛の長さは6~8センチ。タマネギの皮やサフランなどでピンクや黄色に染めて伝統的な図柄に織り上げ、トルコ政府の鑑定書をつけて販売しています」とセールスマネジャーのファウル・サンジャクリさん(38)は胸を張る。価格は織り手の労働時間に比例し、1カ月がかりの商品なら約4万円が相場。日本人観光客のために、配送業者を通じて宅配もしているそうだ。(巽尚之、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■カッパドキア観光 イスタンブールまではターキッシュ エアラインズ(トルコ航空)が成田から1日2便、関西空港からは1日1便就航。関空~イスタンブール間を約13時間で結ぶ。同エアラインの国際線は世界最多となる105カ国の247都市、国内線は43都市に就航。トルコ建国100年となる2023年にはさらに就航都市を100都市増やす計画だ。イスタンブールを経由するトランジットの乗客も多く、最近はアフリカ路線にも注力している。観光情報は、トルコ大使館文化広報参事官室(電)03・3470・6380。www.tourismturkey.jp

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