SankeiBiz for mobile

“ピッチ外の対露戦” 欧州で高まる嫌悪感「剥奪せよ」 FIFA「変更なし」

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

“ピッチ外の対露戦” 欧州で高まる嫌悪感「剥奪せよ」 FIFA「変更なし」

更新

ロシア・首都モスクワ、サンクトペテルブルク  マレーシア航空機撃墜事件に絡み、撃墜を実行したと疑われているウクライナの親ロシア派勢力の後ろ盾とされるロシアに対し、2018年のサッカー・ワールドカップ(W杯)の開催権を剥奪せよとの声が欧州で高まっている。

 撃墜では欧州で200人超が犠牲となり、W杯ロシア大会開催への憤りと嫌悪感が広がっていることに加え、ロシアは事件後も親ロシア派勢力を抑える積極的な行動を起こさず、ウラジーミル・プーチン露大統領(61)も不作為を決め込んでいる節があるためだ。国際サッカー連盟(FIFA)は「ロシア開催に何ら変更はない」としているが、“ピッチ外の対ロシア戦”は激化している。

 「航空安全確保できず」

 乗客283人、乗員15人(全員マレーシア人)の計298人が犠牲となったマレーシア航空機撃墜事件では、乗客のうちオランダ人が192人、英国人が9人、ドイツ人が4人、ベルギー人が4人と、欧州出身者が7割超の209人(二重国籍者2人を除く)を占めた。

 W杯ブラジル大会の優勝国ドイツの与党、キリスト教民主・社会同盟のミヒャエル・フックス連邦議会(下院)院内副総務(65)は事件発生6日後の7月23日、「ロシアが今回の事件に関与していたとすれば、航空路の安全は確保できない。FIFAは、航空の安全が保障できないロシアでのW杯開催が適切か否か考えるべきだ」と指摘。ドイツ、フランス、イタリアが協力してロシアの代わりに開催できるとの見方を示し、これに同調する政治家が相次いでいる。

 英国のニック・クレッグ副首相(47)も英紙サンデー・タイムズとのインタビューで、撃墜事件の責任はロシアにあるとして、「ロシアにW杯ホスト国の栄誉を与えることは想像すらできないことだ。開催権は剥奪されるべきである。そうでなければ、国際社会は弱腰の印象を(ロシアに)与えてしまい、ウクライナに対するロシアの醜い侵略が、美しい試合を台無しにするだろう」と主張した。

 「捜査終了後に議論を」

 ウクライナのアルセン・アバコフ内相(50)はこうした声を歓迎し「ウクライナのサッカー協会や政府も(開催権剥奪について)明確な態度をとるべきだ」との考えを示した。

 撃墜事件で最多の犠牲者を出したオランダのサッカー協会は、「ロシアでW杯を開催することは、オランダのサッカー愛好者や犠牲者の親近者に、さまざまな感情をかき立てるということが十分予想される。撃墜事件をめぐる捜査の終了後、ロシア開催の是非をめぐる議論を始めるのが適切だ」とする声明を発表した。

 繰り返す騒動「またか」

 これに対してFIFAは、撃墜やウクライナ政権部隊と親露派の戦闘を批判した上で、公式サイトでロシア開催を変更する考えはないとの方針を表明。ロシアのビタリー・ムトコ・スポーツ相(55)は「スポーツと政治は別だ。開催返上はあり得ない」と述べた。

 1980年のモスクワ夏季五輪はソ連のアフガニスタン侵攻を理由に日本や欧米諸国が不参加。今年2月のソチ冬季五輪はプーチン政権が同性愛者の権利を侵害しているとして、欧米の首脳が開会式出席を見送った。世界的スポーツイベント開催をめぐって繰り返される騒動にロシア国民は「またか」といった表情だ。ニュースサイトでは、読者が「彼ら(欧州)は常に口実を設けてわれわれから何かを取り上げたいのだ」と書き込み、不快感をあらわにしている。

 「国境のないサッカー仲間」というつながりは侵されてしまうのだろうか。(SANKEI EXPRESS

ランキング