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【まぜこぜエクスプレス】Vol.12 「友情」が子供の支えに ミンダナオ子供図書館の松居友さん

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.12 「友情」が子供の支えに ミンダナオ子供図書館の松居友さん

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「ミンダナオ子ども図書館(MCL)」で暮らす子供たち=2013年6月6日、フィリピン・ミンダナオ島(山下元気さん撮影)  緑豊かなフィリピン・ミンダナオ島。ここで現地の子供たちと暮らすひとりの日本人がいる。「ミンダナオ子ども図書館(MCL)」の松居友さんだ。紛争の絶えない山岳地帯を訪ねて子供たちに絵本を読み聞かせる活動のほか、就学支援、保育所設立、難民救援、植林活動などを行っている。

 「笑顔に救われた」

 ミンダナオは石油や天然ガスなどの資源に恵まれ、果実のプランテーションも広がる島だ。子供たちは美しいジャングルを遊び場に育つ。けれどもなぜか現地の人たちの暮らしは貧しい。プランテーションの開拓で住む場所を追われた先住民の多くは、草刈りや洗濯などの日雇い労働で日銭を稼ぐ。ほとんどの家族が子だくさんだが、子供を学校に行かせることもできない。学歴がないと就職は難しく、貧困の連鎖を断ち切れない。加えて、反政府勢力との紛争、上流の森林伐採による洪水などで、避難民は80万人にも及ぶ。容赦ないスコールに見舞われる熱帯雨林での避難生活は厳しい。

 MCLは、ビニールシートや古着の提供のほか、炊き出しや医療支援を行ってきた。孤児のほか、片親や極貧家庭、学校から遠い山岳地域の子供たちを引き取ったり、学校に通えない子供たちへのスカラシップ(奨学金)支援を行ったり、里親制度を設けたりと、活動は盛りだくさんだ。

 「まさかここまでやるとは思っていなかった」と、友さんは穏やかに笑う。「僕自身がミンダナオの子供たちに出会って、その温かさや笑顔に救われた。だから目の前に困っている子供がいると放っておけない」

 活動資金の大半は日本からの寄付で賄う。そしてボランティアでやってくる日本人の中には不登校や引きこもりの経験者も。子供たちと暮らすことで彼らもみるみるうちに精気を取り戻していく。彼らを変えるのは「子供たちの力だ」と友さんは言う。「今の若者は素直だし感性も豊か。だから、すごいスピードで変わっていく」

 160人と一緒に暮らす

 MCLがスカラシップ支援を行っている子供は現在620人。友さんは160人の子供たちと一緒に暮らす。そして、スカラシップで学校に通うことができた子供たちが、現在のMCLの15人のスタッフの大半を占める。平和で豊かなミンダナオを実現するため、彼らが中心になり活動を支えている。

 MCLで暮らす子供たちにはイスラム教の子も、キリスト教の子も、先住民の子もいる。「僕らはきょうだい。ひとつのファミリーだと言っている」。みんなが自然に認め合い助け合い暮らしている。つらい経験をした子供たちが多いが、「自殺は聞いたことがない」という。子供たちはどんな状況でもたくましく生きようとする。「本当につらい状況だけど、友達がいて誰かが支えてくれるから死のうとはしない」。日本には孤独で自殺する人がいると聞いて、ミンダナオの子供たちは「豊かな国なのになぜ?」と不思議がるのだという。

 「特別なことではなく自然に分かち合えて、ちまたにたくさん友情が見えるような社会だといいなぁと思う」。「友情が人を支える」という友さんの言葉が、とても印象的だった。(一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづるさん/フォトグラファー 山下元気/SANKEI EXPRESS

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