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途中まで噴火を忘れさせる構成考えた 映画「ポンペイ」 ポール・W・S・アンダーソン監督インタビュー

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途中まで噴火を忘れさせる構成考えた 映画「ポンペイ」 ポール・W・S・アンダーソン監督インタビュー

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ポール・W・S・アンダーソン監督は「SFと歴史物はふらっと街に出て気軽に撮影できないから作っていて面白いんだ」と語った=2014年5月26日、東京都港区(宮崎瑞穂撮影)  「バイオハザード」シリーズで知られるポール・W・S・アンダーソン監督(49)の故郷、英国北部にある自宅の近くには古代ローマ時代の遺跡があった。それは第14代皇帝・ハドリアヌス(76~138年)がローマ帝国領の北端であることを示すために築いた大きな壁だそうで、「僕は幼いころからいわば古代ローマの遺跡に囲まれて育ったようなものなんです」。

 小学校の授業で、イタリア・ナポリ近郊の大都市ポンペイが、ベズビオ火山の噴火により一晩で消失してしまったことを知った。「例えればラスベガスのようなきらびやかな大都市が火砕流に埋もれ、その後2000年近く、忘れられてしまったわけです。当時8歳だった僕はその後、ずっと大人になるまでロマンを感じてきました。映画監督となり、いつかポンペイを題材にした作品を撮ろうと構想を温めてきたんですよ」。幼き日の思いは、有力者の娘と奴隷の身分を超えた恋を描いたアクション大作「ポンペイ」として結実した。

 ローマ軍はケルト人騎馬族が暮らす北ブリタニア(英国)の村を襲い、皆殺しにした。何とか生き残った少年マイロ(キット・ハリントン)は、ローマ人の奴隷となり、やがてはグラディエーター(剣闘士)に仕立てられた。コロッセオ(円形闘技場)で命懸けの戦いを繰り広げ、連戦連勝のマイロはポンペイに送られることになり…。

 CG使用なるべく避けた

 筆舌に尽くしがたい大災害を扱ったわりには、全体を貫くトーンが明るい。アンダーソン監督の説明はこうだ。「映画の中でベズビオ火山がいずれ噴火すると、当然ながら観客の皆さんは分かっているわけです。だから、僕は途中まで噴火を忘れさせてしまうような物語の構成を考えました。主人公のマイロが生きるためにグラディエーターとして戦い、身分違いの恋に落ち、ポンペイを食い物にしようとする悪役への復讐(ふくしゅう)を誓う。古典的な英雄物語を描いたうえで、観客に噴火を思いだしてもらうようにしたのです」

 登場人物たちは実際にポンペイで見た石膏像からインスピレーションを得て作り上げた。「アフリカ系の大柄の男が尊厳に満ちたたたずまいで死の瞬間を迎えていました。恐怖に身を縮めている兵士の姿、目を見つめ合ったまま死ぬことを選んだ恋人同士の姿が、心に深く刻まれました」。当時の風景についてもリアリティーを徹底的に追求しようと、コンピューターグラフィックス(CG)の使用をなるべく避けた。「『バイオハザード』ではCGは約3000カットあったが、『ポンペイ』では600カットもなかったはずです。世界中の火山の噴火風景を撮影し、噴き出すマグマの飛び方まで研究したほどです」。アンダーソン監督は画期的な映像技術を使えば使うほどリアリティーから遠ざかるジレンマを強調した。

 企画から完成まで6年を要した渾身(こんしん)の作品だが、またいつの日か古代ローマを題材に映画を撮りたいかといえば、そうでもない。「今は40年来の夢が完結したという思いでいっぱい。また大好きな歴史の世界に戻りたいけれど、いま楽しみにしているのは、得意の近未来の世界に戻り、バイオハザード6を撮ることかな」。6月7日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:宮崎瑞樹/SANKEI EXPRESS

 ■Paul W.S.Anderson 1965年3月4日、英ニューカッスル・アポン・タイン生まれ。映画監督。後に妻となるミラ・ジョボビッチ主演の2002年「バイオハザード」(脚本、制作)が大ヒットを記録し、シリーズ化。監督などを手がけた作品に04年「エイリアンVS.プレデター」、11年「三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」など。

 ※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2014年6月11日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

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