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生活を美しく 色あせない夢 アール・ヌーヴォーとアール・デコ-ヨーロッパのデザインと工芸

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生活を美しく 色あせない夢 アール・ヌーヴォーとアール・デコ-ヨーロッパのデザインと工芸

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アルフォンス・ミュシャ「サラ・ベルナール」1896年_東京国立近代美術館蔵(4月26日~6月1日展示、提供写真)  【アートクルーズ】

 19世紀末から20世紀初頭にかけてのデザイン様式を振り返る展覧会「アール・ヌーヴォーとアール・デコ-ヨーロッパのデザインと工芸」が4月26日から、横須賀美術館(神奈川県横須賀市)で始まる。生活に潤いや美しさを与えた大きな総合芸術のうねりは、どんな背景で生まれ、欧米そして日本でどう広がったのか、100年を経た現代と比べながら考えてみたい。

 アール・ヌーヴォーに大きな影響を及ぼしたのは、1851年ロンドンから始まった万国博覧会。幕末の日本も第2回のパリ万博(67年)から出展を開始、以来、日本の陶磁器や漆工芸などが脚光を浴びた。

 それが、ジャポニスム(日本趣味)を生み、植物や生物をデザインした伝統的な日本美術が欧米の美術にも取り入れられたことが、動植物や曲線が特徴のアール・ヌーヴォー、そして直線とシャープさを特徴とするアール・デコを産む原動力につながった要因の一つといわれている。アール・ヌーヴォーは逆輸入されるかたちで、日本でも流行する。

 工業化で流行拡大

 とくにアール・ヌーヴォーの表現はガラス・金属工芸、ジュエリー、絵画、ポスター、建築、家具と広範囲に広がった。ガラス工芸ならエミール・ガレやドーム兄弟、絵画ならグスタフ・クリムト、ポスターならアルフォンス・ミュシャ(1860~1939年)、建築ならアントニ・ガウディ・イ・コルネら。各分野で、いまも語り継がれる作家たちに、大きな影響を与えた。

 「作家みんなが、いかに生活を美しくしていくか、真剣に取り組んでいた。そして、いい夢を見た。いま見ても、夢は色あせていない」と、あくまで個人的な意見と断りながら、横須賀美術館の冨田康子学芸員は、今もファンの多い、輝いていた時代を振り返る。

 時代の背景には、欧米と日本・オリエントの文化交流という要素のほかに、急速に進む工業化の進展の中で、手作りの丁寧さや魅力を守ろうとする精神があった。その2本の糸が、アール・ヌーヴォー、アール・デコの様式を織り出した。様式は工業製品に生かされ、流行の拡大を助けた。

 今回の展覧会では、前・後期でそれぞれ東京国立近代美術館の工芸品や食器、ジュエリーなど所蔵品が約100点ずつ展示される。総展示数は140点を超えるが、そのうち約60点を占めているのがポスターだ。ポスターは、工業化による商品の量的な生産を背景に、この時代を象徴するアート、メディアとなった。

 その草分けとなったジュール・シェレ(1836~1932年)の作品3点と、アール・ヌーヴォーの代表作家ミュシャの作品3点も展示。絵画に近かったポスターが、装飾あふれる“デザイン画”に変貌する過程が見て取れる。

 ポスターでは、杉浦非水(1876~1965年)の「三越呉服店 新館落成」(前期)なども展示。アール・ヌーヴォーが彩った大正期の街を彷彿(ほうふつ)させる。(原圭介/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■「アール・ヌーヴォーとアール・デコ-ヨーロッパのデザインと工芸」 4月26日から6月29日まで、横須賀美術館(神奈川県横須賀市鴨居4の1)。休館は5月12日、6月2日の月曜。一般800円、高大生、65歳以上600円、中学生以下無料。(電)046・845・1211。

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