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プレゼントを考える行為に近い デザイナー 佐藤オオキさんインタビュー

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プレゼントを考える行為に近い デザイナー 佐藤オオキさんインタビュー

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未来を追いかけるよりも、常に今を楽しみ、全力を注ぐ佐藤オオキさん=2014年2月21日(提供写真)  【アートクルーズ】

 世界で300近くのプロジェクトが進行中という国際的なデザイナーだ。2006年にニューズウィーク誌の「世界が尊敬する日本人100人」に選出され、12年はデザイン界最高の栄誉と言われるEDIDAデザイナー・オブ・ザ・イヤーを史上最年少で獲得している。その栄誉について聞くと、意外なほど謙虚だ。

 「やばいなぁって思いましたね。そういう目で見られてしまうじゃないですか。過去の受賞者はトップデザイナーばかりなので、今後、自分に対する注文のハードルが上がってしまうなぁと。でもハードルが上がることで、自分が成長できることは楽しみですけどね」

 彼にとって賞は、目の前の仕事を一生懸命やってきた結果、付いてきたものに過ぎない。

 「お金も賞もあればあるに越したことはないですけど、それによって自分の物作りのスタンスは変わらないですね」

 折り紙からインスピレーション

 そんな彼が今回手掛けたのは、世界59カ国で260店舗を展開するデンマーク発のインテリアショップ「BoConcept(ボーコンセプト)」とコラボレーションをした新作だ。日本伝統工芸の折り紙からインスピレーションを受けた家具や雑貨など、全12アイテムを発表。クッションには、片側には折り紙の動物が、反対側には折り紙の展開図が描かれている。

 「折り紙は二次元の紙を折り三次元の立体を作り出します。その二次元と三次元の状態を1つのプロダクトで表現しました」

 ユニークで遊び心のある商品が満載だ。

 02年にデザインオフィス「nendo(ねんど)」を立ち上げた。

 「粘土のように柔軟な発想で自由に、という意味で名前を付けました」

 もらったらうれしいもの探す

 始めから仕事の依頼が順調にきたわけではなかった。転機となったのは、イタリアデザイン界の重鎮ジュリオ・カッペリーニ氏との出会い。半年間、ミラノに月1で通い、70もの椅子のアイデアを彼に出し続け、ようやく仕事を射止めた。その時、物作りで大切なことを学んだ。

 「僕はズバ抜けて才能があるわけではないので、自分ができることは何かというと、情熱しかないんです。きれいにまとめようとしないで、やれることを全部やります。クライアントが満足するまで、アイデアを出し尽くしますね」

 彼のデザインにはエゴがなく、クライアントやユーザーを喜ばせたいという気持ちに満ち溢れている。

 「デザインをすることは、クライアントに贈るプレゼントを考える行為に近いです。その人のしぐさを見たり、いろいろな話を聞いたりしながら、相手が欲しいものだけではなく、本人は自覚してないけど、これをもらったらうれしいのではないかと思うプレゼントも探すような感覚です」

 さらに、既成概念を取り除くような新しい視点も提供。

 「使い古された技術、過去にボツになったアイデアであっても、視点を変えたら新しいものになります。どんなものでも見方を変えれば、面白くなるものなんですよね」

 楽しいと思える才能

 意外にも、今後の目標は特にない。

 「今のままでいけるとうれしいです。僕に唯一ある才能といえば、『何に対しても楽しいと思える』こと。常に今が楽しいと思いながらやってきたので、それを続けることが目標ですね」

 いつでも“今”ベストを尽くすことが、結果的に明るい未来につながるのだ。(フリーライター 加藤弓子/SANKEI EXPRESS

 ■さとう・おおき 1977年12月24日、カナダ生まれ。36歳。早稲田大学理工学部建築学科首席卒業。2002年に24歳の若さでnendoを設立。12年には、ウォールペーパー誌とエル・デコ インターナショナル デザイン アワード(EDIDA)で、それぞれデザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞。デザインの対象は家具やファッション、店舗デザインから小物にいたるまでさまざま。現在、BoConceptとコラボレーションの「fusion(ヒュージョン)コレクション」の新作が好評発売中。

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