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常識では推し量れない手法、表現で 「森の玉手箱」展

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常識では推し量れない手法、表現で 「森の玉手箱」展

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透明な素材を使い、人間の実存を問い直す木村幸恵さんの作品=2014年3月12日、神奈川県足柄下郡箱根町の彫刻の森美術館・本館ギャラリー(原圭介撮影)  【アートクルーズ】

 春の日差しが暖かさを増す中、開館45周年を迎えている「彫刻の森美術館」ギャラリーで、3月22日から、現代美術作家8人による作品展「ミーツ・アート 森の玉手箱」が開かれる。開放的で分かりやすい野外彫刻の眺めとは異なり、閉ざされた空間の中に、映像やパフォーマンス、体験アートなど刺激的で、示唆に富んだ作品が並ぶ。“玉手箱”から出てきたあなたは、美術を見る目が、まったく変わっているかもしれない。

 人間の本質を考えさせる

 急ピッチで進む制作現場を訪ねた。出品者の一人、木村幸恵さん(38)は、暗い天井から、透明な糸やラップで作られた不思議な像をつり下げていた。それは浮遊する魂のよう。

 木村さんには、人間に対する基本的な考え方がある。「私は、人間は知覚や記憶、情報の液体にいつも浸されていて、そういったものとの関係が生まれたときに、存在すると思う。それを表現したい」

 半透明で不確かな像は木村さんの“自画像”であり、他者から見られている像でもあるという。人間の本質、実存とは何か、を考えさせる作品だ。

 部屋の中に曲がった壁や傾いた壁を次々作っていたのは、北川貴好さん(39)だった。彫刻家・井上武吉設計のギャラリーには、明かりを取る縦長の窓がある。その外壁は赤く塗られているため、もれてくる光も赤い。

 北川さんは、壁をいくつも作ることで、その赤い光の強弱を変化させる。それだけでなく、部屋の奥の暗がりでは、屋外で撮影した、太陽の光を題材にした映像も映す。屋外から差し込む赤い光(自然の太陽光)と映像の光が共鳴するが、時刻によって赤い光と映像の光は変化し、一瞬たりとも同じ空間(部屋)にはならない。

 北川さんは「自分は、環境に手を加えて、風景が変わっていく作品をつくっている」と作風について話した。

 毒?薬? 予測がつかない

 出品者8人は、2010年から毎秋、神戸・六甲山を舞台に開いている現代アートの祭典「六甲ミーツアート 芸術散歩」の参加者たちだ。

 漫画家のしりあがり寿さんは30個のダルマが回転しながら歌う作品を予定。谷山恭子さんは、鉛のテーブルに刻印させ、その上に紙をあてて鉛筆などでなぞるフロッタージュを持ち帰らせる参加型作品を計画している。

 図鑑の記録から植物などの写真を切り取って庭園をつくる渡辺英司さん、部屋の中に木漏れ日を出現させる足立喜一朗さん、不思議な感覚の言葉を掲示するイチハラヒロコさんらと、どの作品も常識では推し量れない手法、表現で、鑑賞者の心を揺さぶる。

 黒河内卓郎学芸員は「一般の価値観からはかけ離れた変わった作品を集めた。それが毒なのか薬なのか、楽しいものなのか、予測がつかないという意味で玉手箱と名をつけた。それを読み取ってもらえればうれしい」と、初めての企画展のねらいを話した。(原圭介/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■「ミーツ・アート 森の玉手箱」 3月22日~8月31日まで、彫刻の森美術館・本館ギャラリー(神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1121)と周辺。午前9時~午後5時。大人1600円、大・高校生・シニア(65歳以上)1100円、中・小学生800円。(電)0460・82・1161。

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