SankeiBiz for mobile

【Q&A】調査捕鯨中止判決 「科学的研究」に疑い 規模縮小は必至

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

【Q&A】調査捕鯨中止判決 「科学的研究」に疑い 規模縮小は必至

更新

調査捕鯨訴訟の主な争点=2014年3月31日、オランダ・ハーグの国際司法裁判所、※裁判官16人(反捕鯨国の出身者10人(オーストラリア含む)、捕鯨支持国の出身4人(日本は小和田恒(ひさし)氏含む)、残り2人の出身国はIWC(国際捕鯨委員会)に加盟していない)  オランダ・ハーグの国際司法裁判所は3月31日、日本に対し南極海での調査捕鯨を行わないよう命じる判決を言い渡した。反捕鯨の国際世論は根強く、政策転換を迫られる事態となった。

 Q 調査捕鯨って何

 A 国際捕鯨取締条約で認められている科学的研究のための捕鯨だ。1982年に国際捕鯨委員会(IWC)が商業捕鯨の一時停止を決めた。日本は再開に向けデータを集めるために、南極海と北西太平洋で調査捕鯨を行ってきた。主な対象はミンククジラで、調査で得た鯨肉は国内で販売している。

 Q 裁判では何を争ったの

 A 反捕鯨国のオーストラリアが「科学を装った商業捕鯨で違法だ」と訴えた。日本は「科学的で合法な調査だ」と真っ向から反論した。

 Q 判決内容は

 A 「科学研究目的とはいえない」と断じ、日本が敗訴した。調査目的がほとんど変わらないのに捕獲枠が大幅に増えていることから、厳密に科学的検討に基づくのかどうか疑いがあると指摘した。

 Q オーストラリアはなぜ提訴したの

 A 「クジラは高等生物だ」「絶滅の危機にひんしている」など反捕鯨の世論がある。ただ、提訴した2010年時の政権が、総選挙前に支持率低迷の起死回生策として使ったとの声もある。

 Q 捕鯨をめぐる他の国の動きは

 A IWCが1948年に設立された後、米国や英国、オーストラリアなどが反捕鯨に転じた。捕鯨国のうちノルウェーやアイスランドなどは、商業捕鯨の一時停止に対し、異議申し立てや態度留保を押し通し、捕鯨を続けている。IWCでは、捕鯨国と反捕鯨国の勢力が張り合っている状況だ。しかし、日本はあくまで科学的研究を積み重ねて、クジラの資源回復を国際社会にアピールする立場だ。

 Q 判決を受け、日本政府はどう対応するの

 A 水産庁は4月2日、14年度の南極海での調査捕鯨を断念した。今後再開できたとしても、根強い反捕鯨の国際世論もあり、規模の縮小は避けられない見通しとなった。

 Q クジラが食べられなくなるの

 A 和歌山県太地町などでは、IWCの規制対象外の小型鯨類を沿岸で捕っている。捕鯨国からも輸入しており、すぐに食べられなくなる事態は避けられそうだ。しかし、国内でのクジラの消費量は減少傾向にある。

 ≪裁判官16人 反捕鯨国出身が10人≫

 南極海での日本の調査捕鯨を停止するよう命じる判決を言い渡した国際司法裁判所の裁判官16人は、多数が反捕鯨国の出身だった。裁判官は国際法に従い独立して判断するのが原則。反捕鯨国フランスの裁判官は判決に反対した。

 日本捕鯨協会や水産庁によると、16人のうち国際捕鯨委員会(IWC)で反捕鯨の国の出身者はオーストラリアを含め10人。日本の小和田恒(ひさし)氏ら4人が捕鯨支持国出身で、残り2人の出身国はIWCに加盟していない。

 判決には12人が賛成し、捕鯨支持国のロシアと中国出身の裁判官も含まれる。反対した4人は、小和田氏とフランス人の裁判官のほか、捕鯨支持国のモロッコ出身の裁判官と、IWCに加盟していないソマリア出身の裁判官だった。

 裁判官は通常15人だが、今回は当事国である日本の小和田氏が含まれるため、オーストラリアが自国の特任裁判官を任命し、16人となった。(共同/SANKEI EXPRESS

ランキング