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復興予算 「役立ってるのか」…また無駄遣い

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復興予算 「役立ってるのか」…また無駄遣い

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 ≪23%、4兆5305億円未消化≫

 会計検査院は10月31日、東日本大震災に関する2011、12年度の復興関連予算の調査結果を公表した。2年度分の予算総額19兆8949億円のうち13年3月末時点で使われたのは15兆3644億円で消化率は約77%にとどまり、約4分の1に当たる4兆5305億円が未消化だった。11年度予算では5702億円が今も使われずに繰り越され“塩漬け”となっていることも明らかになった。

 復旧・復興事業はおおむね順調なものの、津波の被害が甚大な沿岸地域や除染事業は依然として進んでいないと指摘。単年度消化が原則の予算で繰越額が多額に上っており、より迅速に事業を進めるよう国に求めた。

 11年度の予備費と第1~3次補正予算、12年度復興特別会計を調べた。

 予算100億円以上で消化率が20%を下回っていた事業は、11年度10件、12年度13件だった。

 12年度実施の環境省のがれき処理補助金は15%しか使われず、2502億円が翌年度に。農林水産省の漁港復旧事業は856億円が11年度から繰り越された。検査院は資材や人手の不足、地元住民との調整が進んでいないことが原因と指摘した。

 予算から補助金2兆8674億円を出して設置した取り崩し型の復興関連の90基金は、平均消化率が28.7%で、8244億円しか使われていなかった。

 12年度に事業を終えた9基金は、平均消化率が40.1%で350億円が残った。うち17億円は既に国庫に返納され、これから精算をするものもある。残る81基金は終了年度が13年度以降か未定で、今後使うことが見込まれている。

 検査院は基金の規模が適切かどうか検討し、余剰分は返納を促すよう国に求めた。

 事業の一部では不適切支出も見つかった。流用に当たると問題になったものも含め、昨年度は38件が凍結された。

 ≪「役立ってるのか」…また無駄遣い≫

 被災地以外での職業訓練や、内容に乏しい放射線の啓発ビデオ制作-。「流用」がたびたび問題となってきた復興予算でまた、使い道が疑問視されるケースが見つかった。財源には復興増税による国民負担も含まれ、会計検査院は各省庁に説明責任を求めた。

 被災地以外で職業訓練

 「被災者に役立っているのか」と検査院が厚生労働省に疑問を呈したのは職業訓練を盛り込んだ求職者支援制度。2011年度の予算12億3000万円のうち9億6000万円は「県外避難者が現地で求職者となり、訓練需要が増える」(厚労省)として、岩手、宮城、福島の被災3県以外の労働局が使った。

 だが、受講者が被災者かどうかを把握しておらず、復興予算が被災者に使われたのか確認できなかった。厚労省は12年度以降、3県以外の訓練への復興予算支出を取りやめた。

 反捕鯨団体シー・シェパード対策にまで使われたと批判を浴びた、11年度の調査捕鯨事業21億9000万円も調べた。水産庁は「被災地の宮城県石巻市はクジラに関係した産業が盛んで、復興にはクジラの安定確保が必要」と説明していたが、調査捕鯨で捕れたクジラ肉のうち、石巻市内の業者に販売されるのは1割以下と判明。検査院は「被災地復興との関連が薄い」と結論付けた。

 12分弱の啓発ビデオ

 独立行政法人放射線医学総合研究所(放医研)が補助金を得て2890万円で作った、放射線の影響を啓発するビデオでも問題が見つかった。制作した民間業者との契約では、1時間の長さに23テーマを盛り込む予定だったのに、完成品はたった12分弱で13テーマ。放医研は「理解が難しいものはテーマから除いた」とする一方で問題があったと認め、全額を国に返した。

 震災を機に各地の拘置支所や少年鑑別所が導入した、ガスや電気がなくても使える災害用炊事機器は、21カ所で計26台(計1580万円)が過剰とされた。施設側は「災害時の湯沸かしなど、職員と収容者で別々にする必要がある」と説明したが、検査院は「1台あれば十分」とバッサリ。余った機器は別の施設に回すよう求めた。(SANKEI EXPRESS

 ■復興予算 東日本大震災で被害を受けた堤防や道路などの復旧、福島第1原発事故で避難した住民の生活支援などに使われる予算。一般会計とは切り離し、復興特別会計で管理される。財源は復興債の発行、政府資産の売却、東京電力の賠償金で賄う。復興債償還のため、臨時増税として、所得税が今年1月から25年間、2.1%上乗せされている。

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