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「調査捕鯨は違反」存続危機 日本敗訴 国際司法裁判所「科学的でない」

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「調査捕鯨は違反」存続危機 日本敗訴 国際司法裁判所「科学的でない」

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国際司法裁判所があるオランダ・ハーグの平和宮=2012年7月(AP)  日本が南極海で実施している調査捕鯨について、反捕鯨国のオーストラリアが国際捕鯨取締条約に違反するとしてオランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)に中止を求めた裁判で3月31日、条約違反を認定し中止を命じる判決が言い渡された。ICJの裁判は一審制で控訴は認められておらず、日本政府は判決に従う方針を表明。南極海での調査捕鯨の継続は困難になった。北西太平洋で行っている調査捕鯨は訴訟の対象ではないが、影響は避けられず、商業捕鯨再開を目指してきた日本は抜本的な転換を迫られることになった。

 「深く失望」も従う方針

 ペテル・トムカ所長は判決理由で、クジラの捕獲数の決定が科学的検討に基づくものとは認められないと指摘。日本が現在行っている調査捕鯨は、国際捕鯨取締条約8条で認められた科学的研究のための捕鯨に当たらないと判断した。

 商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)以降、日本は1987年から条約の規定を基に南極海で調査捕鯨を実施してきた。

 これに対し、オーストラリアが2010年5月に提訴。ニュージーランドも第三国として参加した。オーストラリアは裁判で、日本の調査捕鯨の実態は「科学を装った商業捕鯨だ」と主張し即時中止を求めていた。

 これに対し、日本は持続可能な商業捕鯨再開に必要な科学的データの収集を目的とし、その成果は国際捕鯨委員会(IWC)に提出し、評価されていると反論。また、南極海はオーストラリアがICJの管轄権を認めないと表明している「境界画定に関する争いがある海域」に当たり、ICJには判断権がないとも主張した。

 日本の主張はいずれも退けられ、日本の鶴岡公二政府代表は判決後、「深く失望しているが、日本は国際法秩序と法の支配を重視する国家として判決に従う」との談話を発表した。

 北西太平洋も危うい

 今回の判決は日本にとり極めて重い意味を持つ。国際的な司法機関が「客観的」な立場から一定の判断を示したためだ。米国などの反捕鯨国が北西太平洋での調査もやめるよう求めてくる可能性がある。

 捕鯨取締条約は科学研究のために各国が適当と認める頭数を捕獲できると定めており、日本政府は判決で「科学的検討によるものとは認められない」とされた捕獲頭数を減らすなど、条約に合致した手法を今後も模索する考えだ。

 ただ、判決を受け、捕鯨に対する国際的な批判が一段と強まるのは確実で、逆風の中で捕鯨を続けられるのか、不安視する声は多い。日本は南極海のほか、北西太平洋でも調査捕鯨を行っており、2012年度は南極海で103頭、北西太平洋で319頭を捕獲した。捕獲頭数は、いずれもほぼ同じ手法で算定しており、政府関係者は「北西太平洋も提訴されれば、敗訴となる可能性が高い」とみている。

 日本が行ってきた遠洋での大型クジラを対象とした捕鯨は存続の瀬戸際に立たされた。(SANKEI EXPRESS

 ■国際司法裁判所 オランダ・ハーグにある国連の主要司法機関。国境紛争など国家間の争いを国際法に従って平和的に解決することが任務。裁判官は日本の元外務事務次官、小和田恒氏を含む15人。調査捕鯨訴訟では、当事国の日本の裁判官がいるためオーストラリアが自国の特任裁判官を指名、16人になった。判決内容は過半数で決め、可否同数の場合は所長が決定投票権を持つ。(共同)

 【調査捕鯨の判決骨子】

・日本が認めている南極海での現在の調査捕鯨は、科学的研究目的と定めた国際捕鯨取締条約の規定に合致しない

・日本は同条約に基づき認めている現行の許可などを全て取り消さなければならず、今後も付与すべきでない

・現在のクジラの捕獲枠は調査計画の目的に照らして合理的でない

・日本は調査捕鯨を実施してきた期間、商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)を定めた同条約に違反

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