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戦争を肯定するつもりはない 映画「ローン・サバイバー」原作者 マーカス・ラトレルさんインタビュー
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米海軍特殊部隊ネービー・シールズに所属する屈強な男たちがアフガニスタンの山岳地帯で展開した「レッド・ウイング作戦」と、「創設以来の悲劇」とされる顛末を詳細に再現したのが、ピーター・バーグ監督(50)の新作「ローン・サバイバー」だ。実際にこの作戦に参加し、ただ一人の生存者となった原作者の元隊員、マーカス・ラトレル(38)が2月にプロモーションで来日し、SANKEI EXPRESSの取材に「映画化されるとは思ってもみなかったし、映像はハリウッド的に演出された部分もあるけれど、私たちが体験した事実がしっかりと描かれていると思います」と力を込めた。
2005年6月、アフガニスタンの山岳地帯で、ネービー・シールズのマーカス・ラトレル1等兵(マーク・ウォールバーグ)は仲間3人と、タリバン指導者を捕えて殺害する作戦を展開中に、地元のヤギ飼いの男に姿を見られてしまう。足場が悪く、無線通信もままならない、まったく土地勘のない山中で逡巡していると、ヤギ飼いから知らせを受けたであろう200人近いタリバン兵が攻撃を仕掛けてきた…。
ラトレルが原作を執筆したのは、「海軍の上司が情報開示の意味合いで『後世に記録を残さなければならない』として、私に任務として命じましたから」と、実に味気ないものだった。自身も足を銃撃され、断崖絶壁を転がり落ち、背骨を折り、骨盤にはひびが入り、結果的にあれだけの分厚い原作を脱稿することになっても、本当に何も感じなかったのかと重ねて問うと、ラトレルは「命令されたから書いただけです。ただ、映画を通して戦争を肯定したり、海軍を宣伝するつもりもありません。私たち米国人が抱く同胞たちへの哀惜の念を描いた作品なのです」と、苦しそうな表情を浮かべ絞り出すように答えてくれた。
ヤギ飼いを殺害せず、見逃したことが作戦の成否のかぎを握る分岐点となったことは、誰が見ても想像に難くない。ラトレルの考えは、一切の感情を廃し、現実主義的な視点で物事と向き合う、いかにも軍人らしいものだった。刻々と状況が変化し、次々と決断を迫られるのが戦場であることを踏まえ、「結果の成否は別にして、決断を下さないという行為は一番避けなければならない。軍人の仕事は、一度決断したら、決断を全うすべきものなのです」と説明した。
現在は退役軍人とその家族を支援する「ローン・サバイバー財団」の運営に力を注いでいる。3月21日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:大山実/SANKEI EXPRESS)
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