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米軍のアフガン駐留継続めぐり駆け引き

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米軍のアフガン駐留継続めぐり駆け引き

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アフガニスタン・首都カブール  アフガニスタンに展開している米軍が2015年以降も駐留を継続するための取り決めとなる、米・アフガン両政府による「安全保障協定」の前途に暗雲が垂れ込めてきた。アフガンのハミド・カルザイ大統領(56)がここへきて協定への署名に複数の条件を突きつけ、オバマ米政権が当初目指していた年内の署名はほぼ絶望的となった。

 「ゼロ・オプション」

 米、アフガン両政府は11月、協定案について基本合意し、アフガンの部族長老らで構成される最高意思決定機関「国民大会議(ロヤ・ジルガ)」も協定内容を承認。これで協定は実現すると誰もが思ったが、カルザイ氏は、「米軍による空爆と民家捜索の停止、タリバンとの和平仲介は、署名の絶対的必須要件だ」と頑強に主張して、米国から譲歩を引き出そうと駆け引きを展開し、米政府を困惑させている。

 カルザイ氏の言動について、米紙ニューヨーク・タイムズ(12月20日付)のコラムは、「非常に悪賢く、この上なくばかげた」危険なゲームだと評した。

 もし協定が締結されなければ、オバマ政権は「ゼロ・オプション」と呼ばれる、2014年末までのアフガン駐留米軍の全面撤収に踏み切らざるを得なくなる。

 アフガンと並ぶ対テロ戦争の舞台だったイラクで米国は、同様の協定を結んで小規模の米軍部隊を残留させ、現地治安部隊の育成と対テロ作戦の支援を続けようとした。だが、協定をめぐる交渉が頓挫し、駐留米軍は11年12月に全面撤収。宗派対立の再燃などで治安は悪化した。

 評判失墜のカルザイ氏

 ニューヨーク・タイムズ紙コラムは、もしアフガンで米軍が全面撤収すれば、米軍が育成・支援してきたアフガン国軍は崩壊し、ソ連軍撤退後のような内戦状態に逆戻りすると警告する。

 カルザイ氏はなぜ、こうした振る舞いに及ぶのか。英誌エコノミスト(11月23日号)は、来年に2期目の任期を満了し退任するカルザイ氏が、有利な条件を引き出して署名することで実績を残し、国民に「米国の操り人形ではなく、偉大なアフガン人と見なされたいため」と解説するが、実際の動機は誰にも分かっていない。ただ、ニューヨーク・タイムズ(11月23日付)の社説は、カルザイ氏を「気まぐれで、(米国とアフガンの)今後の協調関係を構築する上で頼りにならず、危険な人物」と酷評するなど、欧米諸国での評判が失墜していることだけは間違いない。

 一方、米政策研究機関「ヘリテージ財団」のジェームズ・カラファノ氏(58)によれば、オバマ政権の一部では、カルザイ氏の態度に愛想を尽かし、これまではカルザイ氏への警告の意味合いを込めて言及してきた「ゼロ・オプション」を、実行に移すのもやむを得ないとの声が浮上。米軍の全面撤収後は中央情報局(CIA)と特殊部隊による(1)無人機攻撃(2)タリバン系武装勢力の後ろ盾であるパキスタン政府の買収-といった手段でテロリストを封じ込めるシナリオも水面下で検討されているという。カラファノ氏は、両国間の一連の駆け引きを「まるでテレビのメロドラマのようだ」と揶揄(やゆ)した。

 イラク外相が忠告

 ニューヨーク・タイムズ(12月17日付)によると、イラクのホシヤル・ジバリ外相(60)は最近カルザイ氏と会談した際、米軍撤収後の自国の惨状を引き合いに出し、安全保障協定に署名して駐留米軍を引き留めるよう強く勧めたという。ジバリ氏はニューヨーク・タイムズ紙に対し、イラクのヌーリ・マリキ首相(63)が11月、治安状況の深刻化を受けて訪米し、米国に軍事支援の強化を要請したと明かした。

 だが、今のところカルザイ氏がこうした忠告に耳を傾けている節はない。しばらくは「あまりに高い代償を伴う無意味な政治的チキンレース」(米紙ワシントン・ポスト)を続けていく構えのようだ。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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