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マレーシア機不明1週間 手がかりなく深まる謎

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マレーシア機不明1週間 手がかりなく深まる謎

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マレーシア機が到達可能なエリア(消息不明後に4時間飛行した場合)=※2014年3月8日午前0時41分、クアラルーンプール発。午前1時30分、消息を絶つ  マレーシア航空機(乗員乗客239人)が消息を絶ってから3月15日で1週間となるが、依然、機体は発見されていない。カーニー米大統領報道官は(3月)13日の記者会見で「新たな情報により、インド洋に新たな捜索海域が設けられる可能性がある」と述べた。

 米ABCテレビ(電子版)は(3月)13日、国防総省高官の話として、米海軍の駆逐艦がインド洋に向かっていると報じた。ロイター通信は14日、マレーシア政府当局者の話として、不明機がインドのアンダマン諸島に向けて飛行した形跡があると伝えた。

 一方、航空自衛隊のC130輸送機は14日も南シナ海の上空で捜索活動を続行。海上自衛隊のP3C哨戒機2機も14日、クアラルンプール近郊の空軍基地に到着した。15日にも活動を開始する。(ワシントン 小雲規生、シンガポール 吉村英輝/SANKEI EXPRESS

 ≪米駆逐艦インド洋へ 捜索範囲拡大≫

 マレーシア当局によると、不明機の捜索には3月14日現在、少なくとも13カ国・地域の船舶57隻と航空機48機が参加している。各国・地域は人工衛星や最新鋭の軍備を投入するなど協力態勢を強化している。このうち、中国は海軍艦艇4隻を含む計8隻を送るなど、「過去最大の捜索態勢」を組んでいる。

 船舶57隻、航空機48機参加

 ベトナムは、自国領海内での捜索活動を米国のほか、南シナ海問題で主権争いを演じる中国にも容認するなど、「人命最優先」を掲げた。純然たる人道的措置か、存在誇示かはともかく、捜索にはスプラトリー(中国名・南沙)諸島の領有権を争う6カ国・地域の大半が参加している。米国は、偵察衛星など他国を圧倒する情報網や軍事技術を武器に活動を継続。タイ湾などにヘリを搭載した駆逐艦を投入する一方、P8哨戒機をマラッカ海峡に派遣するなど、捜索を通じて「アジア重視」の外交戦略をみせている。

 ただ、マレーシア政府の説明が二転三転し、関係国には不信感が広がる。米戦略国際問題研究所(CSIS)のアーネスト・バウアー氏はロイター通信に、マレーシアが危機対応に失敗すれば、「中国政府はこの海域を支配すべきだとの考えを構築するだろう」と指摘している。

 事態の長期化を懸念する声も出るなか捜索を難しくしているのは、不明機が消息を絶ってからの情報が混乱している点だ。この1週間で捜索範囲が絞られるどころか、インド洋にまで広がり始めた。

 エンジンから自動発信される信号から、ベトナム南部沖空域での最後の交信から「4時間程度飛行を続けた」との可能性も新たに浮上した。マレーシア側はこの情報を否定しているものの、不明機の最後の確認位置をもとに、ベトナム南部沖を中心に進められたこれまでの捜索範囲は、根拠があいまいになったことは否めない。

 当初は盗難旅券を使った不審な乗客の情報が注目された今回の事態だが、1週間を経て、機体の所在自体が最大の謎だ。航空機や人工衛星の捜索結果として、浮遊物や帯状に広がる油を「発見した」との情報が伝えられ、その後不明機とは「無関係」と確認されるような状況が、連日繰り返されている。飛び交うさまざまな観測、地上の検証で浮上する管理体制の課題など、状況は足元から日々揺らぐありさまだ。

 中国政府の事情

 マレーシア航空は、乗客の大半を中国人が占めることで、家族向けの状況説明に追われる。

 「未確認の飛行機をあんたの国の軍隊が発見したら、何をするのか答えてみろ」。北京での家族向け説明会では、興奮した家族がマレーシア航空やマレーシア大使館の幹部に声を荒らげる場面がたびたび見られる。

 手がかりが少ないなか、中国人家族の間では、「マレーシア軍に撃墜されたのでは」といったデマがたびたび流れ、そのたびに関係者は説明に追われる。

 こうした家族の心情や、「テロの標的にされたのではないか」といった中国社会の空気は、中国政府の対応にも反映されている。

 中国側で捜索の総指揮をとる李克強首相は13日の記者会見で、「ひとつでも望みがある限り、絶対に捜索の手は緩めない」と国民に確約した。現地で捜索にあたる艦船の船長には、衛星電話を通じて「尽力の上にも尽力せよ」と命じた。マレーシア側では、事態にいらだつ中国側のけんまくに衝撃を受けている。

 中国政府が躍起となる理由は、(1)中国人乗客の自国民保護(2)中国を狙ったテロの可能性の見極め-に加え、国民の不満が政府に向けて噴き出すことを避けたいという理由による。

 船艇8隻と人工衛星約10基を投じた中国の捜索陣は、国民が納得できる理由なしに縮小されることはなさそうだ。(シンガポール 吉村英輝、北京 山本秀也/SANKEI EXPRESS

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