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エアバス 日本でシェア50%視野 ボーイング社の牙城、日航の大量購入で風向き変化

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エアバス 日本でシェア50%視野 ボーイング社の牙城、日航の大量購入で風向き変化

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世界最大の旅客機エアバスA380のシミュレーターで、日本上空の操縦体験をする日本人の記者たち。画面右は、富士山=2013年12月11日、フランス・トゥールーズのエアバス本社(内藤泰朗撮影)  欧州航空機最大手エアバス・ジャパンのステファン・ジヌー社長(46)は産経新聞との書面インタビューで、日本での航空機シェアを近い将来、50%近くまで増やす目標を立てていることを明らかにした。エアバス社は昨秋(2013年)、日本航空が初めて自社製の次世代旅客機を大量購入することを決めたことで勢いづいており、今後、米航空機大手ボーイング社とのシェア争いが過熱するとみられる。

 ジヌー社長は、日航による次期主力機の大量発注が「日本で過去最大のもので、エアバスの突破口になった。流れを一気に変えるものになり得る」と指摘。その上で「2020年には日本の航空会社への納入機体数で全体の25%にし、今後20~25年で50%のシェアを確保したい」との目標を示した。

 一方、ボーイング製と比較して日本企業の部品調達比率が低いとの批判が出ていることについては「エアバスの機体製造には約20社の日本企業が参画し、日本から年間10億ドル(約1048億円)分を調達している。日本の産業界はすでに利益を享受している。今後、20年間で3万機以上が生産され、日本もさらなる利益を得ることになる」と強調した。

 エアバスのファブリス・ブレジエ最高経営責任者(CEO)は日本と欧州連合(EU)の貿易促進に向けた政策提言機関「日EUビジネス円卓会議」のEU側議長を務めているが、ジヌー社長は「ビジネスや産業の多くの分野ではまだやらなければならないことがあると考える」とも指摘し、日航の発注が日EU間の経済連携協定(EPA)締結交渉に追い風とはならないことを示唆した。

 エアバス社は昨年(2013年)12月、フランス南西部トゥールーズの本社で開いた中堅航空会社スカイマークの新機体お披露目式に、日本の報道陣約30人を招待し、巨大工場の見学や完成機内覧、普段は入れないパイロット訓練用シミュレーターで操縦体験まで実施。「これだけのプレスツアーは初めて」(関係者)といわれるほどの力の入れようだ。

 エアバス機を製造するEADSは1月2日、社名を「エアバス・グループ」に変更すると発表した。EADSは、欧米諸国の防衛費削減を受け防衛部門の縮小を進めており、収益頭の旅客機部門への期待は高まる一方だ。エアバス社の対日戦略は、一層強化されるとみられている。(ロンドン 内藤泰朗/SANKEI EXPRESS

 ≪ボーイング社の牙城、日航の大量購入で風向き変化≫

 長年にわたって米ボーイングの牙城だった日本の民間航空機市場。だが、ボーイングへの機材調達の依存度がとりわけ高かった日本航空が昨年(2013年)10月、エアバスの次世代旅客機「A350」を最大で56機購入する方針を決定し、風向きに変化が生じつつある。

 日航は昨年(2013年)9月末時点で、グループの航空会社を合わせ、リースを含めて217機を使用。主に地方路線を飛ぶ小型機を除けば、主要機材はすべてボーイング製だ。エアバス機の購入は経営統合前の旧日本エアシステム(JAS)では実績があるが、日航としては初めて。燃費に優れたA350の大量購入で収益力を高めるとともに、機材調達先を分散化する狙いだ。

 全日本空輸も昨年(2013年)12月20日時点で、グループ会社を含めて、使用機材の8割超をボーイング製が占める。ただ、エアバス機を1機も持たない日航とは異なり、エアバスの小型機「A320」を16機持っている。

 全日空の親会社、ANAホールディングスの伊東信一郎社長は「どの航空機メーカーだからということではなく、技術的・経済的な見地で判断し、『いい飛行機』を選びたい」と話す。

 一方、ボーイングの日本法人、ボーイングジャパンのマフェオ社長は昨年(2013年)12月の記者会見で、日航のエアバス機大量購入について、「落胆したが、今日、日本を飛ぶ民間航空機の8割超はボーイング製。従来以上に努力していく」と巻き返しを誓った。日本市場での米欧の航空機大手のせめぎ合いは一段と激しくなりそうだ。(森田晶宏/SANKEI EXPRESS

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