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自分らしい生き方を考える機会に ドキュメンタリー映画「僕がジョンと呼ばれるまで」 太田茂監督インタビュー

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自分らしい生き方を考える機会に ドキュメンタリー映画「僕がジョンと呼ばれるまで」 太田茂監督インタビュー

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 自分らしく生きるとはどういうことなのか-を改めて存分に考えさせてくれるのが、仙台放送のプロデューサー、太田茂(39)が映画監督として手がけたドキュメンタリー作品「僕がジョンと呼ばれるまで」だ。米オハイオ州の高齢者介護施設で暮らす認知症の女性たちにカメラを向け、彼女たちが読み書き計算を通して記憶力を少しずつ取り戻していく姿を追った。「私たちは学習療法を紹介するために映画をつくったのではありません。認知症と向き合い、必死に闘っている彼女たちの姿を見た人が、これまで過ごしてきた人生を改めて振り返り、本当の自分らしさとは何かを考え、これからの生き方を考えるきっかけとなればうれしい」と期待を込めた。

 輝きを取り戻す物語

 この高齢者介護施設の入所者のほとんどが認知症を患っている。スタッフのジョンは本作に登場する入所女性たちに毎日こう尋ねる。「僕の名前を知っていますか?」。答えは「いいえ」がほとんど。名前を教えても彼女たちは5分もすれば忘れてしまう。自分の名前すら書けず、家族との会話もかみ合わず、得意のジョークも飛ばさなくなった。ところが、「脳トレ」で知られる東北大学の川島隆太教授たちが考案した認知症改善プログラム「学習療法」に取り組むうちに、変化が現れた…。

 映像にはしんみりとした雰囲気はみじんもなく、むしろ、どこかポップで、明るく、ロールプレーイングゲームを楽しんでいるかのような気持ちにすらさせてくれる。太田監督は「登場人物の顔にぼかしが施されず、映像に陰惨さが感じられないことが大きな要因でしょう。日本の施設で同様の取材をすれば、まず顔の映像はぼかしだらけになってしまうでしょう」と説明してくれた。また、本作の構成担当で、「戦場のメリークリスマス」(大島渚監督)で助監督を務めたロジャー・パルバースの強い主張によるところが大きいともいう。「彼は『この映画は、認知症の彼女たちがかつての自分の輝きを取り戻していく物語』と捉えているから、彼女たちの青春時代にかかっていた音楽をかけるべきだというんです」。ドキュメンタリーに余計な音楽を入れないという教育を受けた太田監督は、戸惑いながらも思い切って受け入れた。

 入所者の死を描く場面も一切登場しない。「認知症の大変さを描くうえで、テレビとしては絶対に必要ですが、この作品を見る人はある程度、認知症の大変さを理解した方が多いでしょうから」。仙台発のメッセージはその後、各国の映画祭で話題を呼ぶことになる。3月1日から全国順次公開。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS (動画))

 ■おおた・しげる 1974年9月20日、東京都生まれ。98年、仙台放送に入社。報道部記者、制作部ディレクターを経て、2007年から企画制作部プロデューサー。主に脳科学を題材にした全国ネット番組を制作。主な作品は「脳テレ」(08~12年)など。「川島隆太教授のテレビいきいき脳体操」の制作、書籍・DVD化、携帯ゲーム化、海外展開を手がけた。

 ※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2014年2月26日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

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