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信仰の国 ミャンマー 「最後の金脈」へ進出加速
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20年を超える軍事政権から「民政移管」を果たしたミャンマー。欧米による経済制裁はほぼ解除され、中国からバングラデシュ、ベトナムなど新興国へとより安い労働力と新しい市場を追い求めてきた世界経済は、国際社会に復帰したばかりの人口6000万人の「ラストフロンティア」に期待を高める。
東京・高輪のミャンマー大使館。ビザ発給カウンターには、商用ビザ申請のパスポートが山積になっていた。多いときには1日の申請数は300件近くにもなり、日本企業も「ミャンマーブーム」にのって投資や進出を加速させている。
1990年代後半からミャンマーの旧首都ヤンゴンで日本向けの旅行業やコンサルタント業を行っている、ジェイサットコンサルティングの西垣充代表は「繊維やIT業界の進出が進んでいますが、投資環境の情報も少なく税制も不明瞭。電力などインフラも不安定で、様子を見ている企業も多いようです。ただ人件費などのコストは中国の6分の1程度と格安で、3年後には進出していると話す日系企業は多いです」とミャンマーのビジネス環境を説明する。
先月(2013年12月)行われた安倍晋三首相とミャンマーのテイン・セイン大統領との首脳会談では、鉄道網改修や経済特区のインフラ整備を中心に総額632億円の円借款供与で合意。安倍政権での資金協力は1500億円を突破し、ミャンマーの民主化への協力を継続する。
西垣さんは、「2015年には総選挙や東南アジア各国との統一経済圏『ASEAN経済共同体』の発足が控える。ミャンマーブームはまだこれからで、この数年で劇的に変わっていくと思います」と話す。国境周辺の少数民族武装勢力との和平交渉や民主化の進行状況など不安要素もある。軍事政権時代からつながりがある中国が資源分野において先行する部分もあるが、アジアに残された最後の「金脈」を求め日系企業の進出は加速するだろう。
≪軍政脱し明るさ 課題はインフラ≫
最大野党、国民民主連盟(NLD)党首のアウン・サン・スー・チー氏の長期軟禁、2007年、軍治安部隊が反政府デモを取材中の日本人ジャーナリストを殺害した事件など、強権な軍事政権支配が続いていたミャンマー。11年から就任したテイン・セイン大統領の政治改革により、民主化が進むミャンマーを訪れた。
日本から飛行機で約8時間、熱帯の旧首都ヤンゴンに降り立つと、道路を走る日本車の数に驚く。ほとんどは日本から輸入した中古車で、右側通行の道を右ハンドルのまま走っていた。
裏通りには揚げ物やラーメンなどを売る屋台がにぎやかに陣取り、電気店には日本や韓国の最新家電やスマートフォンが並ぶ。市内には新しいショッピングセンターやおしゃれなカフェなども登場し、無線LANでインターネットに無料でアクセスできた。数年前までは厳しい言論統制が敷かれていた国とは思えず、生き生きとした市民生活からは軍政だったころの面影は見られなかった。
しかし、ヤンゴン中心部でも突然停電に見舞われたり、スコールが降ればあちらこちらの道路で冠水。ホテルも不足気味な上に値段も高く、インターネットの接続環境もよくない。急速な発展にインフラ整備が追いついていないことを実感する。
親日的と言われるミャンマーだが、日本人とわかると話しかけて来る人もいた。通訳業などを行うヤンゴンに住むタンタン・イーさん(41)は、「日本製品は壊れないし人気があります。また、日本企業の進出もあり日本語学校に通う人はかなり増えていますよ」と話す。仏教建築物など東南アジアの豊かな文化を抱えることから、日本からの観光客も近年増加傾向にある。民主化と経済発展を進めるミャンマーの今後にますます注目が集まる。(写真・文:写真報道局 早坂洋祐/SANKEI EXPRESS)