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永遠に一緒… 樹木葬に集う「墓友」

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永遠に一緒… 樹木葬に集う「墓友」

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樹木葬による共同墓のイメージ=2014年1月8日現在  家族や他人同士、独身者らが同じ木の下で自然に返る樹木葬が人気だ。核家族化が進む中、家の墓と違い跡継ぎがいらないことが関心を集めている。元気なうちから死後に寄り添う場所を決めた仲間は互いを「墓友」と呼び、趣味や語り合いの会を持っている。

 心のよりどころ

 東京都町田市の民間霊園。サクラを墓標にして周囲の芝生の下に遺骨を埋葬した共同墓がある。昨年(2013年)12月上旬の見学会では「日当たりが良くてすてき」「家族に負担がないのがいい」と参加者に好評だった。

 2005年に完成したこの樹木葬墓地は、NPO法人エンディングセンター(町田市)が霊園と共同で運営する。使用料は1人40万円、2人で70万円など形式によって違い、直径15センチの円筒形に掘る区画が約3000カ所ある。

 センターの樹木葬は「桜葬」と呼ばれる。毎年サクラの花の咲く頃に会員が集まり、詩の朗読や仏式、神式、キリスト教式でそれぞれ故人を弔う。会員同士で俳句や気功、散策などのサークル活動もしている。

 川崎市に住む会員の江口とし子さん(67)。12年11月に亡くなった夫はこの墓地で眠っている。自分もいつかここで一緒になるつもりだ。「骨つぼに入るのは嫌。自然から生まれたから自然に返りたい」と語る。会の仲間と写経や街歩きをするのが楽しみ。「墓友が見守り合って最後に送ってくれる。心のよりどころができた」

 センターは大阪府高槻市でも同様の墓地を運営しており、会員は合わせて約2400人。60代の入会が多く、いわゆる「団塊世代」が65歳になり始めた2012年は60代が前年比68%増の190人、13年は220人入会した。

 家族だけに頼らず

 東京都世田谷区の会社員、坂上ひろみさん(58)は一人っ子で独身。介護が必要な80代の母と暮らす。父は12年4月にセンターの会員になり、11月に町田市の樹木葬墓地に入った。「体調を崩して急に亡くなったので、死を受け止められなかった」と振り返る。

 月に1回開かれる語り合いの会に参加し、介護の苦労を気遣ってくれる人や、自分の病気について率直に話す人に出会った。他の人がどうやって死に向き合っているのかを知ることで、心の整理がついてきた。

 坂上さんは「死に近づきたくはないけど寿命はある。同じ時間が流れるなら、暗く考えずに生きた方がいい」と話す。

 樹木葬は各地の霊園や寺で徐々に増えており、公営霊園では横浜市が06年度から8年間受け付け、東京都立の小平霊園も12年12月から合祀型の「樹林墓地」を始めた。

 エンディングセンター理事長の井上治代東洋大教授(社会学)は「核家族化が進み、家のお墓を継ぐのが難しい時代。介護やみとりに加えて葬送も、家族だけに頼らず社会で担うべきだ」と訴えている。(SANKEI EXPRESS

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