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首相の靖国参拝 強い支持に中韓困惑も

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首相の靖国参拝 強い支持に中韓困惑も

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東京都千代田区九段北の靖国神社  【国際情勢分析】

 安倍晋三首相(59)による靖国神社参拝について、中国、韓国両国のメディアは「外交的挑発」と決めつけ、日本の孤立化を喧伝(けんでん)している。ただ安倍首相のこうした動きの背後には国民の強い支持があることも察知しており、日本国民の意識の変化に対する戸惑いを感じさせる。

 「中国は参拝を利用」

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は(2013年)12月28日、「日本の首相の参拝は挑発的な行動だ」とする社説を掲載。「参拝は中韓両国の激怒を引き起こした。中国は、防空識別圏設定に対する各国の否定的な反応をそらすことに利用するだろう」と指摘し、「安倍首相は日本が地域で孤立し、米国との協力を困難にする危険を冒した」と批判した。

 一方でこの社説は、靖国神社について「戦犯に限らず数百万の戦死者を追悼する施設だ。米国大統領が、かつての敵国からアーリントン国立墓地での追悼を止めよと要求され、それに留意することなどありえない」とも言及する。

 米国政府やメディアは、参拝が「地域の不必要な緊張」という結果を引き起こすことを懸念しているのであって、「日本と第二次大戦を戦った米国民の感情が傷付けられた」とか、「戦後秩序への挑戦だ」などと中韓のように参拝行為自体を非難しているわけでは当然ない。

 反響し合う非難

 中国、韓国のメディアが安倍首相の参拝を非難する重要な論拠は、「日本国内ですら批判がある」という点である。

 韓国紙の朝鮮日報(電子版)は(2013年)12月27日の社説でこう主張した。「朝日新聞毎日新聞など日本の大手メディアは『靖国神社は根本的に戦争責任を否定している』として政治家による参拝を批判してきた。そのような場所に安倍首相が出向いて頭を下げたのは、侵略の歴史を否定してきた勢力が一線をついに越えてしまったことを意味する」

 中国国営の新華社通信も(2013年)12月27日、「靖国参拝は日本国内と国際世論の批判を受けた」「日本のメディアが安倍の詭弁(きべん)破綻を指摘」とする記事を相次いで配信し、参拝への非難の正当性を強調した。

 つまり、日本国内の一部メディアが「中国・韓国の反発」を理由に参拝を批判し、中国メディアは、こうした日本国内の声を根拠に非難を繰り広げる。まるで反響し合う“こだま”だ。

 中国共産党機関紙の人民日報(電子版)は(2013年)12月27日の論評記事でこう書いた。「拝鬼(靖国神社参拝を指す)は何を意味するか。靖国神社は14人のA級戦犯の位牌(いはい)を祭っている。これらの戦犯にひざまずき、軍国主義を復活させようとすることだ」

 首相の参拝に反対する日本人でも、さすがにこうした中国側の誤解、曲解に全面同意する人はまれだろう。そもそも靖国神社に位牌はない。初歩的な知識すらないのに「靖国神社の本質」を説かれても説得力はない。

 「世論戦」を宣言

 “歴史カード”には沈黙するだけだったはずの日本の変化に、中国、韓国メディアの間には困惑の色も見え隠れする。

 先の朝鮮日報の社説は、「韓国政府は『これまでの日本』はもう存在せず、海の向こうの『新しい日本』が頭をもたげつつあるという認識を持つべき時だ」と結んでいる。

 中国中央テレビは(2013年)12月27日、ポータルサイトのヤフージャパンが実施した靖国神社参拝に対する意識調査の結果(2013年12月26日時点)を紹介した。約13万人が投票し、参拝を「妥当」とする声が80%を超えたことについて、コメンテーターとして登場した中国国際問題研究所の曲星局長は「もし本当に8割の人が参拝を支持しているとしたら、問題は非常に深刻だ。侵略の歴史を否定する右翼的思潮が深刻な程度に達している」と解説。国際社会が日本に巨大な政治圧力をかけるとともに、「若者たちに、かつて日本がいかなる侵略国家であったかを知らしめないといけない」と世論戦の必要性を訴えた。

 仕掛けられた世論戦には、根気よく“倍返し”で正論を訴えていくしかない。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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