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【首相靖国参拝】空白の「禍根」絶つ 小泉氏以来7年4カ月ぶり

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【首相靖国参拝】空白の「禍根」絶つ 小泉氏以来7年4カ月ぶり

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靖国神社を参拝する安倍晋三(しんぞう)首相=2013年12月26日午前、東京都千代田区の靖国神社(矢島康弘撮影)  安倍晋三首相(59)は政権発足から1年となる12月26日、東京・九段北の靖国神社に参拝した。首相による靖国参拝は2006(平成18)年8月15日の小泉純一郎首相(71)以来、7年4カ月ぶり。首相は第1次政権時代の不参拝について、かねて「痛恨の極み」と表明しており、再登板後は国際情勢などを慎重に見極めながら参拝のタイミングを探っていた。日本政府は米国に対し事前に外交ルートを通じて首相の参拝を連絡した。中国へも知らせたが、韓国には伝えなかった。

 安倍首相は参拝後、記者団に「この1年の安倍政権の歩みをご報告し、二度と再び戦争の惨禍によって人々が苦しむことのない時代をつくるとの誓い、決意をお伝えするためにこの日を選んだ」と語った。

 首相は「戦場で散った英霊のご冥福をお祈りすることは世界共通のリーダーの姿勢だ」と参拝の意義を強調。さらに「中国、韓国の人々の気持ちを傷つけるつもりは毛頭ない」として、中韓両国首脳に「直接説明したい」とも語った。

 首相は、モーニング姿で昇殿して参拝し、「内閣総理大臣 安倍晋三」名で白い菊を献花した。靖国神社境内にある世界の全ての戦没者を慰霊する「鎮霊社」にも参拝した。参拝を受け、「恒久平和への誓い」と題した「首相の談話」を発表した。

 首相の参拝に対し、中国の程永華、韓国の李丙●(=王へんに其、イ・ビョンギ)両駐日大使はそれぞれ外務省の斎木昭隆次官(61)を訪ね、厳重抗議した。在日米国大使館は「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに、米国政府は失望している」との談話を発表した。同盟国指導者の政治的行動に対し、米政府が踏み込んだ形で懸念を表明するのは極めて異例だ。

 これを受け、岸田文雄外相(56)はキャロライン・ケネディ駐日米大使(56)と電話で会談し、戦没者への慰霊を目的とした首相の参拝の意図について説明し、理解を求めた。これに対し、ケネディ氏は「本国に伝える」と応じた。

 安倍首相は参拝後に出演した自民党のインターネット番組で「米国で近年、誤解が増幅されている。この機にしっかりと説明していくことで誤解を解いていきたい」と述べた。

 ≪中国「右翼主義の政策の絶頂」、韓国「怒りを禁じない」≫

 安倍首相の靖国神社参拝を受け、中国、韓国両政府は12月26日、日本の大使を呼び抗議するなど猛反発した。中国外務省の秦剛報道官は26日、「両国関係の改善・発展に新たな政治的障害をもたらした。日本は一切の結果を引き受けなければならない」と対抗措置を示唆。この日、北京で予定されていた、小渕優子衆院議員を団長とする日中友好議員連盟訪中団と劉延東副首相の会談は中止された。また、秦報道官は「本心からアジアの隣国との関係を改善したいなら、靖国神社ではなく(江蘇省南京市の)南京大虐殺記念館に行くべきだ」と述べた。

 中国国営新華社通信によると、王毅外相も26日、木寺昌人駐中国大使を呼び、「強烈な抗議」を表明した。参拝を速報した新華社通信は「安倍氏の1年にわたる右翼国粋主義の政策の絶頂だ」などとする記事を配信した。

 軍の意見や国内世論を無視できない習近平指導部は今後、対日関係改善の過程で譲歩することが許されない情勢となった。中国メディアが反日報道を激化させる可能性もあり、再開したばかりの交流事業への影響や反日デモの機運が再燃することも懸念されている。北京の日本大使館と上海の日本総領事館は26日、対日感情の悪化が予想されるとして、在留邦人に注意喚起のメールを出した。

 韓国政府は26日、「慨嘆と怒りを禁じ得ない」と非難する声明を発表した。韓国各メディアも「韓日関係のさらなる悪化は必至」などと報道。開催を調整していた次官級の戦略対話などに関し、韓国外務省報道官は26日、「今はそのような話をする時点ではない」と否定的な見方を示した。

 韓国政府報道官として非難声明を発表した劉震竜(ユ・ジンリョン)文化体育観光相は、「近隣国と国際社会の憂慮と警告にも関わらず、戦犯を合祀(ごうし)している靖国神社を参拝したことは誤った歴史認識をあらわにし、日韓関係、北東アジアの安定と協力を根本から傷つける時代錯誤的な行為だ」などと指摘した。

 歴史認識問題をめぐる韓国政府の立場は通常、外務省報道官が声明などで発表するが、格が上の政府報道官の声明発表は異例。安倍首相の靖国参拝を韓国政府が、極めて重く受け止めていることを示している。

 さらに、韓国外務省の金奎顕(キム・ギュヒョン)第1次官は26日、一時帰国中の別所浩郎大使に代わり、在韓日本大使館の倉井高志総括公使を呼んで抗議した。(北京 川越一、ソウル 名村隆寛/SANKEI EXPRESS

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