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高梨 好敵手なき女王の道/W杯最多14勝目 ソチ「金」へ弾み

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高梨 好敵手なき女王の道/W杯最多14勝目 ソチ「金」へ弾み

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2014年ソチ冬季五輪会場=2014年2月7日~2月23日(開催期間)、ロシア・ソチ  ソチ五輪ノルディックスキー、ジャンプ女子で金メダルが期待される高梨沙羅(たかなし・さら)選手(17)=クラレ=が1月11日、札幌市宮の森ジャンプ競技場(HS100メートル、K点90メートル)で行われたワールドカップ(W杯)個人第6戦で今季5勝目を挙げ、サラ・ヘンドリクソン(19)=米国=を抜いて女子単独最多となる通算14勝目をマークした。五輪の初代女王が決まる2月11日までちょうど1カ月。抜群の安定感と飛距離で圧倒的な強さを見せつけた高梨は、ライバルの動向は気にせず、「やることを一つ一つやるだけ」と自らに言い聞かせた。

 「いい日になりました」

 小雪が舞い、今季の最低気温を更新した氷点下8.1度の札幌。極寒の宮の森で高梨は1回目に最長不倒の99メートル、2回目も94.5メートルにまとめ、3700人の観衆を熱くした。カリーナ・フォクト(21)=ドイツ=が2回とも94.5メートルの240.7点で2位、第5戦を制して高梨の今季連勝を4で止めたイリーナ・アバクモワ(22)=ロシア=が3位だった。高梨とともにソチ五輪代表に決まっている伊藤有希(ゆうき、19)=土屋ホーム=が84メートル、95メートルの219.6点で自己最高の4位に入った。

 「緊張というよりは、遠くから足を運んでくれた人たちに楽しんでもらいたかった。地元の北海道で見にきてくれた人たちに飛び込んでいくのは幸せでした。いい日になりました」

 別格のジャンプを見せた高梨はこう語り、昨年は表彰台を逃した宮の森で成長の跡を示した。1本目を飛ぶまでに悪天候で再三、前の選手たちがスタートを仕切り直した。集中力が途切れやすい状況下で、1回目にこれ以上飛んだら危険というHS(ヒルサイズ)にあと1メートルと迫り、着地の安定を重視してゲートを1つ(50センチ)下げた2回目も無難にこなした。

 2人で35戦27勝

 前戦のロシアでのW杯は飛び出しで前へ突っ込みすぎる悪い癖が出たが、小学生のころから慣れ親しんだジャンプ台できっちり修正した形だ。日本の小川孝博チーフコーチ(47)は「気持ちを試合でコントロールできている」と精神面の充実を評価。高梨が競技を始めて以来、指導に当たっている父、寛也さん(45)は「ジャンプの流れが良かった。修正点はあるが調子はすごくいい」と笑みがこぼれた。

 この日の優勝で、尊敬する「もう一人のサラ」、ヘンドリクソンを抜きW杯勝利数単独トップに躍り出た。2011年に始まった女子W杯は、今回で35戦。高梨とヘンドリクソンで計27勝もしているのだから、いかに2人が抜きん出た存在かが分かる。

 そのヘンドリクソンは昨夏、練習中に右膝に大けがを負い、戦線離脱中。小さめの台から飛び始めたとの情報もあるが、五輪出場は不透明なままだ。

 高梨は昨年までは「サラがいないとモチベーションの維持が難しい。早く復帰してほしい」と話していたが、今は「彼女のことは特に考えていない。ただ、記録より内容のレベルアップを図りたい」と語る。好敵手なき寂しき道を、孤高の女王はひたすらに進む。(SANKEI EXPRESS

 ■たかなし・さら 1996年10月、北海道上川町(かみかわちょう)生まれ。グレースマウンテン・インターナショナルスクール(旭川市)在学中。元ジャンプ選手の父の指導で8歳からジャンプを始め、2011年1月のHBC杯で女子の国内最長不倒記録となる141メートルを飛び初優勝。13年世界選手権で個人銀、混合団体金。W杯で11~12年シーズンは第11戦で日本女子選手初優勝を果たし、総合3位。昨季は8勝を挙げ、史上最年少の総合優勝。152センチ、43キロ。

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