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歴史つないだ女子ジャンパー ソチへ道開いた

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歴史つないだ女子ジャンパー ソチへ道開いた

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2014年ソチ冬季五輪会場=2014年2月7日~2月23日(開催期間)、ロシア・ソチ  来年2月、ノルディックスキー・ジャンプの女子選手が五輪で初めてソチの空を舞う。1999年に女子だけの国際大会が行われてから14年。先駆者の思いは後輩へと引き継がれ、歴史的なシーズンを迎える。

 挑戦に冷たい視線

 その挑戦に向けられた視線は冷たかった。74年にオスロ伝統のホルメンコーレン大会で女子が初飛行した際、当時の男子の世界王者は「勇気は尊敬する。でもジャンプは女性がすべきスポーツではない」と断じた。

 日本の先駆者、山田いずみさん(35)は中学1年の92年にノーマルヒル、97年にはラージヒルを公式大会で初めて飛んだ。しかし一部で「着地の衝撃で出産できなくなる」などと言われていたのを後から聞き、ショックを受けた。「実力で認められるしかない」と強く思ったことを覚えている。

 男子ほどに試合数はなく「目標を立てづらく悩んだ時期もあった」と明かす。2歳下の葛西賀子(かさい・よしこ)選手(33)=現姓・吉泉、日本空調=が中学卒業で競技を続けるか迷った時には「女子が減ったら試合に出るチャンスが少なくなる」と引き留めた。

 99年に国際スキー連盟(FIS)公認の初めての国際大会グランドツアーが欧州で実施され、山田さん、葛西選手や欧米勢の30人弱が参加した。2001年には日本チームが発足し、取り巻く環境は変わってきた。だが男子並みのサポートを得られず、コーチが海外に炊飯器を持参し、カレーライスをつくったこともあった。山田さんは「今ある環境で一番になろう」と懸命に歴史をつなぎ、初めて女子が実施された09年世界選手権に出場した後に引退した。

 注目を弾みに

 欧米の女子選手が粘り強く訴え続け、11年4月に悲願の五輪入りが決まった。ワールドカップ(W杯)実施2シーズン目の昨季、高梨沙羅選手(17)=クラレ=が総合優勝。今や多くの企業から支援を受けるエースは「いずみさんや先輩がいたからこそ五輪を目指せる時代になった」と感謝する。

 FIS登録の女子は約230人と少ない。力量差は大きく、普及や競技レベルの向上は今も大きな課題だ。FISのW杯運営責任者、吉田千賀(ちか)さんは「五輪で注目を浴びることがきっかけになれば。劇的に変わるとは思わないが地道に魅力ある競技にしていきたい」と将来像を描いた。

 ≪代表4枠も 争い激しく≫

 ソチ五輪ジャンプ女子の出場枠は30で、W杯などの順位に応じた得点順に、各国・地域最大4枠が与えられる。現時点で出場枠3の日本は12月からのW杯で4枠目の獲得を目指すとともに、代表を決める1月まで激しい争いを展開する。

 17歳の高梨の他にも楽しみな選手は多い。夏のグランプリ(GP)で初の表彰台となる3位に入った19歳の伊藤有希は、所属する土屋ホームの男子選手と練習して筋力や運動能力を磨いた。山田優梨菜(長野・白馬高)もGPで3位になるなど力をつけている。

 岩渕香里(松本大)は飛距離が魅力。29歳の渡瀬あゆみ(アインファーマシーズ)は夏からの好調を維持したい。小浅星子や茂野美咲(ともにライズ)も代表争いに絡みそう。先駆者で33歳の吉泉も大舞台を狙う。(SANKEI EXPRESS

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