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F1のボス、44億円贈賄起訴 税務調査逃れ図り、引退の危機

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F1のボス、44億円贈賄起訴 税務調査逃れ図り、引退の危機

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 自動車レースの最高峰、F1グランプリ(GP)の興行部門を取り仕切るフォーミュラワン・マネジメント(FOM)社の最高経営責任者(CEO)で、“F1の支配者”とも称されるバーニー・エクレストン氏(82)が、贈賄罪でドイツの検察当局に起訴された。

 容疑は、8年前のF1関連の株式売却に絡んだ独銀行元幹部への贈賄で、独ミュンヘン上級地方裁判所が7月17日、明らかにした。エクレストン氏はF1をサッカーW杯、五輪と並ぶ世界三大スポーツイベントの一角に育て上げた立役者。容疑を否定しているが、裁判の行方によっては引退は避けられないとみられ、F1界に激震が走る可能性もある。

 ロイター通信などによると、英国人のエクレストン氏は2005年、自身の傘下にあり、F1の商業権を統括している持ち株会社SLECの株式の一部を、ドイツ・バイエルン州(州都ミュンヘン)のバイエルン州立銀行と共同で英国の投資会社CVCキャピタル・パートナーズに売却した際、銀行の幹部(事件発覚後に懲戒免職)に対して、英税務当局の調査を受けないようにしてもらう見返りに4400万ドル(約44億円)を賄賂として贈ったとされる。

 この元幹部は、かつてF1ビジネスにエクレストン氏とともにかかわっていたゲルハルト・グリブコウスキー氏(55)で、昨年8月、収賄と背任の罪で独裁判所から懲役8年半の判決を受けている(係争中)。

 バイエルン州立銀行は、かつてF1の放映権を独占するなどし、SLECの株式の47%を所有していた独キルヒメディアグループが経営破綻した際、その保有株を引き継ぎ、売却先を探していた。グリブコウスキー氏は、SLEC株売却の特命を帯びた担当役員だった。

 「違法ではない」

 CVCキャピタル・パートナーズは現在、SLECの株式の過半数を所有し、10月にシンガポール証券取引所でSLECのF1関連株の公開を予定。目標評価額は100億ドル(約1兆円)以上とされる。

 エクレストン氏は英BBCなどの取材に対して、「違法なことは何もしていない。金を渡したのは、ゲルハルトが(職務権限のある)公的な人間だからではなく、元々ビジネス仲間だったからだ。税金に関して彼がいろいろと口出しするので、黙らせるため渡した金だ。賄賂ではない」と主張。

 「法廷で潔白であることを証明する」としている。しかし、一方で「負けたら、引退はしょうがない。刑務所から指示は出せない。後継者はまだ決めていないのだが…」と、弱気とも受け取れる発言もしている。

 レース拡大の立役者

 英国サフォーク州イプスウィッチ出身のエクレストン氏は、第二次世界大戦後、10代で中古オートバイのディーラー事業を始めて成功。財を成す一方で、二輪と四輪のレースに興味を示し、自身もレーサーとして参戦し、F1ドライバーを目指したこともあったが、挫折した。しかし、1972年にF1チームのブラバムを買収してチームオーナーとなったのを皮切りに、F1ビジネスに本格参入。1999年と2000年には当時の為替レートで900億円近い所得を上げ、英国ナンバーワンになったこともある。

 近年、F1のヨーロッパ開催が各国の経済情勢によって不安定な状況にある中、シンガポール、韓国、中国、マレーシア、インドなどアジアの新興国での開催を増加させたのも、エクレストン氏の功績とされる。初公判の期日は9月中旬以降に決まる見通しだ。(SANKEI EXPRESS

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