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【鈴木明子のHAPPY SKATING】積み重ねた経験に手応え

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【鈴木明子のHAPPY SKATING】積み重ねた経験に手応え

更新

 10月25、26日に、グランプリ(GP)シリーズの初戦となったスケートカナダに出場しました。いよいよソチ五輪シーズンの本格的な幕開けです。

 私にとっては、「集大成」となる特別なシーズンでもあります。結果はショートプログラム(SP)が3位、フリーが2位で総合順位は3年連続の2位でした。「全体的に落ち着いた試合運びができた」というのが感想です。

 SP曲「愛の賛歌」には、私のスケート人生が詰まっています。

 柔らかい音色に乗った出だしは、スケートとの出合いの部分。6歳で競技を始め、楽しさと喜びに満ちた気持ちで滑ります。中盤は苦しんだ日々を振り返ります。実家を離れて仙台の大学に入学後、摂食障害で一時はリンクに通えなくなりました。体重がげっそりと落ち、まさに身も心もボロボロでした。実家に戻り、愛情が込められた母の手料理で少しずつ回復へ向かっていく様子を力強く演じていきます。

 ダブルアクセル(2回転半ジャンプ)以降の終盤は、どん底から抜け出して復帰した今の自分を全身で表現し、フィナーレへと突き進みます。目指しているのは、メリハリの効いた演技です。

 今回はまだGP初戦ということもあり、最初の3回転-3回転の連続ジャンプの2本目が回転不足になり、最後のスピンも最高難度のレベル4に届きませんでした。演技中に「ミスをした」と思ったところがそのまま得点に反映されていて、今後の課題だと認識しました。

 「冒険」せず現実路線

 SPの冒頭に組み込んでいる連続3回転ジャンプは、2つともトーループジャンプだった昨季よりも難易度を上げようと、3回転フリップ-3回転トーループを練習してきました。

 ただ、今回はトーループ2本で臨むことにしました。「なんで入れないの」と聞かれることもありますが、「できないものは入れられない」というのが正直なところです。練習でもなかなか跳べないのに、ギャンブルはできません。

 難度を上げるのは、より高い点数を狙うからであり、回転不足になって得点が下がっては意味がありません。今季は大事な五輪シーズンで、“冒険”もできません。戦っていく上での戦略として、現実的な路線を選択せざるを得ないのです。

 12月の全日本選手権までに精度を高めていきたいですが、長久保裕(ながくぼ・ひろし)コーチからは「全日本も堅くいく」と回避を示唆されています。「(ソチ五輪の)代表さえ決まれば、好きにしていいから」とも(笑)。

 表現力で確実な進歩

 フリーのミュージカル「オペラ座の怪人」は、冒頭のミスを挽回しての2位でした。

 最初に予定していた3連続ジャンプがタイミングが合わずに単発に終わりました。1本目のジャンプはよく力みが出て失敗してしまいます。長久保コーチからも「気をつけなさい」と言われていたのですが、本番でもミスをしてしまいました。

 ただ、次の2連続を3連続にしようと、すぐに気持ちを切り替え、大崩れを防ぎました。

 1本目を失敗しても、普段の練習から引きずることがないように気持ちをコントロールしてきた成果でした。

 経験が実を結んできたと実感できたのは、表現力などの演技構成点を高く評価してもらえたことです。SPもフリーも全体トップの得点でした。

 フリーの得点127.99点のうち、ジャンプなどの技術点が61.76点で、演技構成点は66.23点。スケーティング技術など5項目のうち、4項目で8点台をマークできました。演技後の取材でも、このことを聞かれましたが、私は「今までの積み重ねがつながってきているのかなと思います」と答えました。

 思い出すのが、スケートカナダに初めて出場した2009年です。中国杯で初優勝して臨んだ大会でしたが、ミスもあって残念ながら5位。何よりもショックだったのが、このときの演技構成点です。今回よりも約20点も低く、自分でも得点を見たときには、悔しくて、どうしたら良い点が出るのだろうとすごく悩んだ記憶があります。

 あれから4年。スケーティングを磨き、年々、自分でも滑れているという感覚をつかめるようになりました。ジャンプの間の“つなぎ”の部分も意識を高めてきました。そうした成果で、今回も含めてスケートカナダは4回目の出場ですが、演技構成点は常に右肩上がりで伸びています。以前はなぜ得点が伸びなかったのかも、いまの演技に比べ、滑りやつなぎ、表現などの面でまだまだ足りない部分があったと理解できます。

 今季は、ステップやスピンを音に合わせて演じることにも取り組んできました。大会直前に米デトロイトに滞在し、振付師のパスカーレ・カメレンゴ氏からも表現の部分をより細かく指摘され、練習を積みました。努力が少しずつ報われている気がします。

 次は日本開催のNHK杯(11月8~10日)。ファイナル目指してがんばります。(フィギュアスケーター 鈴木明子/SANKEI EXPRESS

 ■すずき・あきこ 1985年3月28日、愛知県豊橋市生まれ。フィギュアスケート女子シングルスで2010年バンクーバー五輪8位入賞、12年世界選手権銅メダル。邦和スポーツランド所属。趣味はヨガ、読書。

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