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手話通訳「デタラメ」4時間 マンデラ氏追悼式で「幻覚起こした」
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南アフリカ・ヨハネスブルク 全世界に生中継された12月10日のネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領(1918~2013年)の追悼式で、手話通訳者として壇上に立った男性が、手話のできない“偽者”だったとみられることが分かった。南アの聴覚障害者団体や専門家から「手を動かしているだけで意味を成していない」との批判が続出し、南ア政府も男性が起用された経緯などについて調査を始めた。当の“通訳者”は統合失調症の症状が出て「幻覚を起こした」などと弁明しているが、関係者は「完全なペテン師だ」と激怒している。
ヨハネスブルクの地元紙「スター」などによると、この男性はタマサンカ・ジャンティさん(34)。ヨハネスブルクのFNBスタジアムで開かれた追悼式にスーツ姿で現れて登壇し、約4時間にわたってバラク・オバマ米大統領(52)ら世界中の要人の演説内容を「手話通訳」した。
しかし、南ア・ケープタウンの手話教育団体のキャラ・ローニング会長は11日、フランス通信(AFP)に対し、「彼は完全な偽者で一つも手話になっていなかった。ただ単に腕を動かしていただけ」と指摘。別の団体のドルフィン・フラングウェイン氏もロイター通信に「創作の手話を続けていただけで、『ありがとう』も正確に伝えられなかった」と語った。
英デーリー・テレグラフ紙が、専門家にジャンティさんの手話の解読を依頼したところ、「さー、パーティーを始めようぜ。大きな魚、小さな魚、段ボール箱! 確かに演説は退屈だ。でも大丈夫。もうすぐキスがやってくるから」などと、全く意味不明なフレーズが羅列されていたという。
ジャンティさんは式典後、一時行方が分からなくなっていたが、12日になってスター紙の取材に応じ、「日当85ドル(約8700円)で手話通訳を請け負った。統合失調症の持病があり、壇上で症状が出てしまった」と説明。その上で「何もできなかった。自分をコントロールし、自分の中で起きていることを世界に分からないようにしようと努力した。意味が通じない手話になってしまい、とても申し訳ない」と謝罪した。
一方で、地元のラジオ局「702」によると、ジャンティさんは式典直後には「自分の手話には満足している。自分が“手話のチャンピオン”だと思う」などと述べたという。ジャンティさんは昨年、南アのジェイコブ・ズマ大統領(71)が出席した与党・アフリカ民族会議(ANC)のイベントでも手話通訳を務めたことがあり、その時も手話について「意味がよく分からない」「南ア式手話では重要とされる表情の変化がなく、怪しい手話通訳者だ」といった苦情が寄せられていた。
結果的に大統領が“ニセ通訳”と壇上で並ぶことになった米国では、ジョシュ・アーネスト大統領副報道官が、偉大な指導者であるマンデラ氏をたたえる式が乱されたことは「残念だ」と不快感を表明した。南ア政府は、この問題で調査を進めていることを明らかにし、詳細が分かり次第公表するとしているが、コリンズ・チャバネ大統領府相は、「今週末に予定されている国葬の準備に追われているため、近日中の調査完了は不可能だ」と述べている。(SANKEI EXPRESS)