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ブッダ生誕「伝説の木」発見 ネパール世界遺産地下から最古の仏教寺院

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ブッダ生誕「伝説の木」発見 ネパール世界遺産地下から最古の仏教寺院

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 仏教の開祖ブッダ(釈迦(しゃか))の生誕地として世界遺産になっているネパールのルンビニで、国連教育科学機関(ユネスコ)の研究チームが、紀元前550年ごろの木造建築物の遺跡を発掘した。中心部に巨大な木が生えていた痕跡も見つかり、釈迦誕生時の「伝説」と一致。チームは誕生場所に「仏教の聖地」として建立された世界最古の仏教寺院とみており、諸説ある釈迦の誕生時期が通説より200年近く早まる可能性があるという。口頭の伝承しか残されておらず、物的証拠がほとんど見つかっていない謎に満ちた釈迦の生涯を解明する歴史的な発見として注目を集めている。

 「信仰、伝説、考古学、科学が一致する希有(けう)な事例だ。いつ釈迦が生まれ、いつその教えが広まり、信仰として根付いたのか。長く議論されてきた謎を解く手がかりになる」

 研究チームのリーダーである英ダラム大学のロビン・コニンガム教授は、発見の意義をこう強調する。調査はユネスコの世界遺産保存プロジェクトの一環として行われ、日本政府も出資し協力している。25日に3年にわたる調査・研究の成果が、考古学会誌アンティクイティ12月号で発表された。

 「聖地の連続性示す」

 ルンビニでは1896年に、古代インドのアショカ王が紀元前249年に釈迦の生誕地を訪れたことを記した石柱が発見されており、1997年に生誕地と認められ世界遺産に登録された。

 研究チームは、アショカ王が建立したとされる「マヤ・デビ寺院」の敷地の地下で、木製の柱が立っていたことを示す穴など木造建築物の遺構を発見。穴から採取した木炭や砂を複数の年代測定法で分析したところ、いずれも紀元前550年前後のものと判明した。

 木造建築物の大きさや形状は、れんが造りのマヤ・デビ寺院とほぼ同じだったことから、木造建築物の上に後年、それを模した寺院が建てられたと推測。コニンガム教授は「仏教の聖地としての連続性を示している」と説明する。

 さらに、中心部からは石化した巨大な木の根の断片も発見された。その場所は屋根のない広場になっており、その形状はマヤ・デビ寺院にも継承されている。ここに木が生えていたとみられており、「ブッダの母マーヤが沙羅双樹の木に右手を伸ばしたところ、右脇からブッダが生まれた」という伝説とも一致する。

 誕生200年早まるか

 釈迦については、裕福な家庭に生まれ、29歳で出家して菩提樹の木の下で悟りを開き、80歳で没したと伝えられている。だが、いつ生まれたかは不明で諸説ある。

 ユネスコの世界遺産サイトは「紀元前623年」としているが、一般的な学説では「紀元前400年前後」が有力になっているという。

 今回の調査・研究に照らすと、紀元前550年前後にはすでに仏教の聖地が存在し、釈迦はそれ以前に生まれていたことになる。

 誕生時期は有力な学説よりも150~200年も前になり、没後に最古の仏教寺院が建てられたとすると、「紀元前623年」説と重なる。

 釈迦は本当に、今回見つかった「伝説の木」の下で生まれたのだろうか。さらなる研究の成果が待たれる。(SANKEI EXPRESS

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