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【世界自転車レース紀行】(10)インドネシア この街を世界にPRしたい

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【世界自転車レース紀行】(10)インドネシア この街を世界にPRしたい

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 大小約1万7000余の島々から成る島嶼(とうしょ)国家インドネシア。約2億4200万人の人口の大半が首都、ジャカルタのあるジャワ島に住むという。今回のレースは、そのジャワ島の東端に位置するバニュワンギという小さな街を拠点に行われた4日間の「ツール・ド・イジェン」だ。

 今年が2回目の開催。同時期に開催が予定されていたいくつかのインドネシア国内でのレースは、スポンサーが見つからないことなどから取りやめとなったが、「ツール・ド・イジェン」は地元主催者たちの強い希望でスポンサーが付き、無事に開催された。

 地元の主催者たちは、自転車レースを通じて観光PRをしたいと考えている。街から街を駆け抜ける自転車レースは報道を通じて、全世界に街のPRができるからだ。バニュワンギ近郊には、レース名にもなっているイジェン火山やハワイのノースショアに並ぶと言われるサーフポイントなど多くの観光スポットがある。イジェン火山は、夜になると青い炎が見えるという活火山だ。

 しかし、近くに空港がないため、バリ島のデンパサール空港から最低でも6時間、車やフェリーを乗り継がないと到着しないのが実状で、アクセスの悪さから観光客の足が遠のく原因となっている。

 隣のバリ島に訪れる大勢の観光客を、なんとかしてバニュワンギまで呼び込みたいというのが地元の強い願望なのだ。

 ≪世界目指して アジアを駆け抜ける≫

 レースが開催されたのは、ジャワ島東端の小さな街やその郊外だったにもかかわらず、コースとなる道は大勢の観客でにぎわっていた。とくに学校単位で観戦に繰り出す子供たちが多く、目をキラキラとさせて、選手たちに声援を送っていた。

 親日国としても有名なインドネシア。そんな子供たちの中には、日本の国旗を持っている子や、カタコトの日本語で話しかけてくる子もいるし、チームに帯同する通訳の大学生は驚くほど流暢(りゅうちょう)な日本語を話していた。多くの日本企業がインドネシアに進出していることや、出稼ぎ先として日本が人気なこと、マンガやアニメなどの日本の若者文化の浸透などが背景にあるのだろう。どこでも日本人選手や関係者たちは温かく迎え入れられた。

 レースは、日本からもナショナルチームを含む3チームが招待され、第3ステージでは、愛三工業レーシングチームの福田真平が集団でのゴールスプリントを制して優勝した。

 日本のチームは現在、インドネシアを始めとするアジアのレースを注目している。自転車競技の本場は今も昔もヨーロッパであり、本場でレース活動をする日本人選手も多い。国際自転車競技連合が定める世界選手権への出場枠はおもにヨーロッパ、アジア、アメリカなど5大陸での国別ランキングによって決められる。アジア大陸に属する日本は、昨シーズン、国別ランキングが4位だったために、3位までに与えられる出場枠を獲得できなかったのだ。

 世界選手権に出場することが絶対ではないが、いま改めてアジアのレースが注目されていることは間違いない。とくに東南アジアでは、経済の急成長などを追い風にしてレース数が増えてきている。過酷な暑さや、慣れない食事など課題は多いが、アジアから世界を目指して、日本人選手は観客たちの大声援を受けて必死に戦っている。(写真・文:フリーランスカメラマン 田中苑子/SANKEI EXPRESS

 ■たなか・そのこ 1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。08年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかな自転車レースを追っかけ中。

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