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薬草栽培、映像で伝承 生薬の国内生産につなげて!

ニュースカテゴリ:暮らしの健康

薬草栽培、映像で伝承 生薬の国内生産につなげて!

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漢方薬の生産金額(国産、輸入)  技術・知識 顔装着カメラ使い

 後継者難や中国の輸出制限に直面し、国内生産量の増加が望まれる漢方薬の薬草について、最先端の映像技術を使って栽培のノウハウを伝承しようとする取り組みが始動した。文章では伝わりにくいコツも一目瞭然で分かるよう工夫した取り組みで、パナソニックが開発した顔装着型の流行機種「ウエアラブルカメラ」を利用。大阪大や農業系の独立行政法人も参画した産官学連携の試みで、関係者は「技術継承に役立て、薬草の国内生産を増やしたい」と意気込んでいる。

 漢方薬の国内使用量は年々増加傾向にあるが、国内生産量は低水準で推移している。日本漢方生薬製剤協会によると、漢方薬の消費量を反映する生産金額は平成24年で1519億円にのぼり、17年の1・36倍の水準だが、20~22年度に国内で使用された薬草の生産地は中国が8割を占め、国産は約12%にとどまる。

 中国では近年、漢方薬の薬草の需要が増え、価格が高騰。協会の調査では、使用量が多い30品目の中国からの輸入価格は18~22年の4年間で6割上がり、近年は輸出を制限している。安定供給や価格維持のため、国内生産量を増やすことが課題となっている。

 しかし、薬草栽培の難しさや、後継者難の問題が行く手に立ちはだかる。

 カンゾウやシャクヤク、トウキなどの栽培は、採集や花の摘み取りなどに手間がかかり、経験や独特のノウハウが必要だが、言葉や文章だけでは十分に伝わらない。阪大総合学術博物館の研究支援推進員、伊藤謙さん(薬学博士)は「薬草栽培の業界は少子高齢化と薬価の低下で、後継者の確保が難しくなっている」と指摘。国内生産を増やすために必要なノウハウの継承が困難な状況だ。

 そこで、阪大と独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構は昨秋から、薬草栽培の作業の様子をビデオカメラで撮影する試みを始めた。

 パナソニックが昨年5月に発売した顔に装着するウエアラブルカメラを利用。作業者の目線で撮影するため、注視すべき場所や手の動かし方などがはっきりと分かる利点がある。

 プロジェクトでは、熊本県や大分県の農場で行っているカンゾウ国産化の研究の様子を撮影。ほかに、高知県立牧野植物園や漢方薬メーカーの栃本天海堂(大阪市)などが阪大と機構の勧めで導入し、技術の蓄積と伝承を進めている。

 実際の作業の映像は、26日に阪大総合学術博物館で始まる漢方薬の企画展で公開される予定。薬草生産のイノベーション(技術革新)ともいえる産官学連携の新たな取り組みに、伊藤さんは「いろんな企業や機関に取り入れてもらいたい」と期待している。

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