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配食サービスに新規参入相次ぐ 高齢化、制度改正で拡大へ
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消費税増税に合わせ、高齢者向けの配食サービスに投入する低価格商品を披露したワタミタクショクの発表会場 高齢者の家に食事を届ける配食サービスの市場に飲食関連企業の参入が相次ぎ、競争が激しくなっている。4月からの消費税率引き上げに合わせ、1食当たり474円の低価格弁当も登場し、高齢者の選択肢が多様化。高齢者人口の増加に加え、介護保険制度の平成27年度改正で配食のニーズが高まるとみられており、市場はさらに活性化しそうだ。(寺田理恵)
ベネッセホールディングス(岡山市)はシニア・介護事業の一環として、4月から新たに配食サービス事業を開始する。カロリーや塩分を控えるなど、健康に配慮した日替わり弁当やおかずを5日単位か月単位で宅配し、ご飯付きの弁当「まいにち七菜」は1食当たり620円。
「有料老人ホームの入居者に食事を提供してきたノウハウを生かす」といい、ホームを展開する子会社とフードサービス事業を行うLEOC(東京都千代田区)が合弁会社、ベネッセパレット(渋谷区)を設立。4月に世田谷区の一部で始め、都内への拡大に向けて1日約2万食を生産できる工場を設置する計画だ。
受注にITを活用し、高齢者が選べるメニューを増やす仕組みを計画している企業もある。宅配総合サイト「出前館」の運営会社、夢の街創造委員会(大阪市中央区)は毎日、毎食選べる配食サービスの実施に向け、4月末をめどに都内で試験販売を開始する。
従来の配食サービスは週や月単位での注文が一般的だが、同社は出前のピーク時間の前にルート配送することで、温かい食事の注文を1食から実現できる見込みという。広報担当者は「自分で選べる楽しさを重視したい。もともと即時即配の店舗が加盟しており、小回りが利くので多彩なメニューを1食から提供できる」と話す。
新規参入が相次ぐ中、最大手のワタミタクショク(東京都大田区)は1食当たり474円の低価格商品「まごころこばこ」を発売した。同社は5日か7日単位で届けており、これまで最も安かった弁当は同540円。カロリーやおかずの種類を減らすことで価格を下げた。
新たな弁当は首都圏などから宅配を開始し、4月14日に全国でスタート。同社は増税のタイミングに合わせて発売することで、負担増を感じる年金生活者を新規客として取り込みたい考えだ。「戦略的にラインアップに加えた」とする。
配食サービスは平成4年、国が高齢者の在宅支援として制度化した。しかし、12年に介護保険が創設されると、訪問介護ヘルパーによる調理やデイサービス(通所介護)で提供される食事の利用も可能になった。公的な配食サービスの縮小傾向が指摘された一方、民間事業者の参入が増えた。
27年度の介護保険制度改正で、国は要介護度の軽い要支援1、2の人向けのサービスのうち、訪問介護とデイサービスを介護保険から市町村の事業に移し、配食や見守りなどの生活支援も含めた総合事業に再編する方針だ。市町村は事業の民間委託もできる。このため、配食の市場は拡大するとみられており、選択肢が広がりそうだ。
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高齢化の進展などに伴い、食品の宅配市場が拡大している。矢野経済研究所が昨年実施した調査によると、食品宅配市場は平成24年度に前年度比3.9%増の1兆8078億円だった。
調査は配食サービスのほか、ピザ・すし・牛乳の宅配、ネットスーパーやコンビニエンスストアによる食品の宅配などの分野も対象。分野別では、高齢者向けの配食サービスが堅調に推移した。ネットスーパー宅配も会員数を大幅に伸ばした。
背景には、高齢者の増加▽女性の社会進出定着による家庭内調理時間の短縮▽個食化の進行-などがあり、29年度には24年度比で約2割増の2兆2045億円に拡大すると予測している。