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消費増税控え新価格が決まらない 食品・外食、ライバル社と駆け引き

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消費増税控え新価格が決まらない 食品・外食、ライバル社と駆け引き

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消費税増税に向けてメニュー改定の相談をする有間賀寿夫代表(左)とキリンビールマーケティングの野口洋平さん=東京都新宿区  4月1日の消費税率引き上げまで、1カ月を切った。しかし、メーカーや小売り事業者の一部では価格改定の方針を明確にしていないケースも多い。税率引き上げの影響が大きい外食産業や食品メーカーでは、ライバルの動向を見ながら最後の駆け引きが続く。

  ■メニューで調整

 「梅酒の価格を3種類くらいのグループに分けてみようか…」

 素材にこだわり、女性に人気の居酒屋「和創作 空(くう)」(東京都新宿区)など、東京都内で飲食店3店を経営するクウコーポレーションの有間賀寿夫代表は2月下旬、ビールや飲料を仕入れるキリンビールマーケティングの担当者と話し合いを重ねた。

 4月に消費税率が8%に引き上げられると、消費税を含めた総額表示でコーヒー付き千円のランチや、4千円ちょうどの夜のコースなどのメニューの維持が難しくなる。有間氏は酒や料理の構成を変えて、切りのいい価格を維持する方針だが、消費者が満足する料理の提供に頭を悩ませる。

 帝国データバンクの調査によると、消費税率引き上げでレストランなどの外食店は1・62%、居酒屋などの酒場では2・18%、売上高が減少する。自動車販売(同0・16%減)などに比べて、消費税増税の影響が大きいという。

 デフレ下で値下げ競争に終始した外食産業では、増税分を企業努力で補う余地が小さい。だが、外食店の場合は増税分を100%価格に転嫁しても、客数の落ち込みで営業利益が5分の1に減少するとの試算もあり、経営者はジレンマに陥っている。帝国データバンク東京支社の箕輪陽介氏は「経費削減などの対策を取り尽くした企業が多く、これ以上の削減ができるかは疑問だ」と指摘した。

  ■トータルで3%

 「大半は10円上げるが、ミネラルウオーターは据え置いて、全体で3%に調整するつもりだ」

 清涼飲料大手のアサヒ飲料の本山和夫社長は3日、消費税率引き上げに伴う自動販売機での商品価格について明らかにした。ダイドードリンコも決算会見で同様の意向を示した。

 またサントリー食品インターナショナルもこの日、自販機で販売する大半の商品を10円引き上げ、商品全体で約3%分を転嫁すると発表し、飲料大手の値上げ方針が出そろった。サントリーは緑茶飲料「伊右衛門」など500ミリリットル入り製品を160円とする一方、ミネラルウオーター「サントリー天然水」(550ミリリットル入り)は110円に据え置くという。

 先月末に同様の発表を行ったコカ・コーラグループは「全体で3%に近づけるための措置。収益やシェアなどの影響に鑑みた」(コカ・コーラウエストの吉松民雄社長)と説明した。

 税率引き上げ分の3%を一律に価格転嫁できれば問題は少ない。だが、端数の処理に制約がある場合など全額転嫁は難しいケースもある。利幅を削って消費税増税分を補うか、内容量削減などで原価を低減するか。それぞれ経営への影響は異なり、価格改定の判断を難しくしている。

   ■あえて値下げ

 こうした中で、あえて値下げに挑む業界もある。ゼンショーホールディングスが展開する牛丼チェーン「すき家」は、4月1日から並盛りの価格を10円引き下げ、270円にすると発表した。看板商品の割安感を打ち出すことで「消費税増税でさらに低価格商品のニーズが高まり、客が増える」とのシナリオを描く。

 ライバルの吉野家ホールディングスの安部修仁会長は「安値を競うより、メニューの付加価値を高めて価格に反映すべきだ」と述べ、低価格化競争からの脱却を示唆していた。すき家はあえて値下げし、差別化を図る狙いだ。

 こうした動きは、ライバルの価格設定にも影響を与える。吉野家や松屋も今後対策を急ぐ見通しだ。消費税率引き上げは、企業に新たな価格戦略のあり方を問いかけている。

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