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帝人、新アラミド繊維で反攻 防護服に需要、タイ拠点工場を新設

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帝人、新アラミド繊維で反攻 防護服に需要、タイ拠点工場を新設

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 帝人は11日、高機能繊維のアラミド繊維について、耐熱性や難燃性に優れた新たな繊維を開発し、タイに工場を新設すると発表した。投資額は約45億円。今年12月に着工し、2015年7月に稼働を始める。

 アジアを中心とした新興国市場で需要が拡大する防護衣料を中心に取り込みを狙う。また2013年3月期で最終赤字に陥った要因の一つになったアラミド繊維事業で攻めに転じる。

 タイにあるポリエステル繊維の工場敷地内に100%出資の現地法人を8月末に設立する。生産するのは、優れた熱防護性と安定した高い染色性をもつ新しいメタ系アラミド繊維。作業従事者の安全性を確保するため各国で厳しい安全基準が続々と導入されており、アジアなどの新興国でも防護衣料としての需要拡大が見込まれている。

 年産能力は2200トン。山口県岩国市で生産しているアラミド繊維「コーネックス」の年産能力2700トンにほぼ匹敵する規模の建屋と設備を整える。これによりコーネックスとあわせ防護衣料市場での競争力を高める。

 帝人はアラミド繊維を炭素繊維と並ぶ中長期の成長ドライバーと位置づけ、重点的に事業展開する方針を打ち出している。

 同社グループで高機能繊維事業などを担当する遠藤雅也常務執行役員は、アラミド繊維の生産体制について「世界の市場成長にあわせて、時機を見た増設を今後も続けていきたい」と強調。その上で「アジアを中心に対象ユーザーが大幅に広がる」として、さらなる投資に強い意気込みを見せた。

 帝人グループは、強度に優れ防弾チョッキや防刃手袋などに用いられるパラ系アラミド繊維で2種類、長期耐熱性や難燃性に優れ産業用のダスト集塵(しゅうじん)用のフィルターや消防服などに使われるメタ系アラミド繊維で1種類を生産している。

 パラ系で世界トップ、メタ系で世界3位のシェアを持ち、多様な品種のアラミド繊維を作る「世界でも類のないメーカー」(遠藤常務執行役員)としてグローバルに事業展開している。

 しかし、同社のアラミド繊維事業は、米国の防衛費削減などのあおりを受け、防弾チョッキ用などに使われるパラ系アラミド繊維が伸び悩み、13年3月期に291億円の最終赤字に落ち込む一因ともなった。

 ただ「安全・安心」「軽量化」「省エネ」といった流れに沿って、中長期的には年率約7%で成長を続ける市場とみており、新たな品種の開発で、アラミド繊維市場での存在感をさらに高めたい意向だ。

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