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帝人、米炭素繊維2ライン停止 コスト削減策…工場従業員も半減へ

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帝人、米炭素繊維2ライン停止 コスト削減策…工場従業員も半減へ

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世界の炭素繊維生産量  帝人が米テネシー州ノックスビルに所有する炭素繊維工場の3つの量産ラインのうち2ラインについて、9月をめどに停止することが6日、分かった。コスト削減策の一環で、同工場で働く従業員の約半数に当たる65人程度の人員も削減する。同社の炭素繊維やアラミド繊維といった高機能繊維事業部門は、2013年3月期決算で営業赤字に陥っており、コスト削減による体質強化を図る。

 この工場は、1993年に帝人傘下の東邦テナックス(旧東邦レーヨン)が買収。以来、炭素繊維の焼成という重要な工程を担っているが、設備が老朽化して生産効率が悪くなったことから、停止に踏み切る。この2ラインで、同社の炭素繊維年間生産量1万3900トン(12年)の約2割に当たる2400トンを生産しており、幅広い産業用途として、世界中で使われている。

 生産停止分については、当面、日本とドイツのラインで代替生産する。

 炭素繊維大手の日本の化学メーカー3社が、世界シェアの6~7割を持つといわれる炭素繊維の世界でも、中国などのメーカーが技術力の向上を急いでいる。

 だが、日本の3社は航空機向けやシェールガスなどの圧力容器向けといった、安全性や強度などの付加価値が求められる分野で追随を許していない。

 日本の3社は現在、海外の自動車メーカー大手と、それぞれ量産車向けの炭素繊維複合材料(CFRP)について共同開発を進めている。

 帝人は、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)と、CFRPの研究開発を行っている。具体的には自動車のオートメーションに最適な「1分に1個の供給」を実現するため、「熱可塑性樹脂」と呼ばれる素材を使って、オートメーションの工程に組み入れる方法を推し進めている。そうした中で、数年中には米国内に工場を新設し、自動車向けを中心とした炭素繊維の生産をさらに拡大する方針だ。

 同社の13年3月期決算では、高機能繊維・複合材料事業部門の営業損益が47億円の赤字となり、その立て直しが急務となっている。その中で、欧州の需要低迷や景気減速といった外部環境に左右されない収益構造を構築するため、構造改革によるコスト削減を継続的に実施している。

 コストダウンによる体質強化の上で、量産車向けなどの生産拡大の時期に備える。

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