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超小型EV、実用化へ各社本腰 低コスト化課題「100万円を切らないと…」
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日産自動車が実証実験を始めた超小型車EV=15日、横浜市西区の日産グローバル本社 自動車各社が、軽自動車より小さい1~3人乗りの超小型電気自動車(EV)の実用化に向けて本腰を入れ始めた。日産自動車が横浜市内の公道を走る実証実験を始めたほか、ホンダも来年、さいたま市など複数の自治体で実験に取り組む。
国土交通省が来年1月から地方自治体が申請すれば公道での走行実験を認めることで、手軽で環境にやさしい乗り物として普及が加速しそうだ。EVに搭載された蓄電池を家庭用電源に活用することも期待でき、大きな市場に化ける可能性も秘めている。
「これなら私にも運転できそう」。日産が19日から横浜市と共同で実験を始めた2人乗り超小型EV「ニューモビリティーコンセプト(NMC)」を見た中年女性はこう話した。
この実験は、NMC8台を観光客らに無料で貸し出し、みなとみらいや元町などの観光スポットを走ってもらう。車両開発を目的とした試験走行のため、公道も走れる。
車両は全長2.34メートル、幅1.23メートルと小ぶりな2人乗りながら、最高速度は時速80キロ、4時間の充電で100キロ走行できる。運転するには普通免許が必要だが、同実験のための会員登録はすでに900人を超え、21日には募集を一時止めたほどの反響があったという。
EV普及を進める日産にとって、NMCは小回りが利くなど普通車EV「リーフ」とは異なる需要が見込めるために開発。2013年にも市販を検討する。
ホンダの超小型EV「マイクロコミュータープロトタイプ(MCP)」も、全長2.5メートル、幅1.25メートル。子供2人を乗せた3人乗り自転車からの乗り換えも視野に入れ、大人1人と子供2人が乗車できるタイプもある。災害時などには電気を供給する家庭用蓄電池としての機能も検証する。
超小型EVではトヨタ車体が7月、最低価格が66万8000円の1人乗りの「コムス」を販売。コンビニエンスストアのセブン-イレブンが宅配車両として採用することを決めている。
スズキとダイハツ工業も昨年の東京モーターショーで超小型車の試作車を展示。今後、実証実験の可能性を探っていくという。
国交省は来年1月から自治体が区域などを定めて申請すれば公道実験を認めることを決め、地域の実情に合わせた活用策や安全性を検証。高齢化や人口減少に対応する街づくりの一環として超小型EVの普及をにらみ、将来的には道路運送車両法で軽自動車とは別の車両区分を設けたい考え。
ただ、超小型EVは高速道路を走れないなど利用が限定されるほか、新車で80万円を切る軽自動車がある中で「100万円を切らないと売れない」(ホンダ関係者)と低コスト化が課題。「本格普及までには時間がかかる」(自動車メーカー幹部)と慎重な見方もある。(古川有希)