【社説で経済を読む】米国はドゥテルテ氏を非難できるか (2/3ページ)

 ドゥテルテ氏はダバオ市長時代から麻薬常習者の強権的摘発を進めてきたことで知られ、「裁判抜きで容疑者数千人が殺害されている現状は法治国家としてあるまじき事態」(毎日)とする批判も強い。

 日比首脳会談で安倍首相は明示的に人権に言及しなかったが、これを強く批判したのは朝日と毎日だ。

 朝日は「日本がフィリピンとの関係を重視するあまり、『法の支配』など自由主義の価値観を後景に退かせるのは、本末転倒である」とし、毎日も「日本の人権感覚が国際社会から疑われかねない対応」と批判の歩調を合わせた。

 しかし、中国のような力ある大国はともかく、経済力も国際社会での発言力も弱いフィリピンのような国に、人権擁護を金科玉条のように説諭することには、やはり注意が必要だろう。「上から目線」と映れば、反発しか生まないからだ。

 なにより、中国と違うのは、ドゥテルテ氏が民主的手続きによって選ばれたトップだということだ。いまなお国民の8割が支持している事実も無視できない。

 アキノ前大統領が意欲を示していた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加にドゥテルテ氏が「冷淡なことも、気になる」(日経)ことの一つだ。

 フィリピンは、経済的にも日本との結びつきが強い。昨年の輸出先も日本が21.1%とトップを占め、2位以下の米国(15%)、中国(10.9%)を大きく引き離している。米国のTPP批准の先行きが依然不透明なだけに、日本としては経済面からもフィリピンとの足並みをそろえておく必要がある。

鍵握る日本の存在